広範囲な出発物質から合成可能な“新規合成方法”のご提案
Advantages
- 出発物質の物性や薬理活性を保存可能な合成手法
- 可視光と光触媒のみで反応する、廃棄物のない環境適応性・コストメリットの高い導入プロセス
- 1Step合成で高収率。既に10種以上(平均収率90%)の合成実績あり
Background and Technology
ミトコンドリアは、エネルギー産生、アポトーシスの誘導制御、カルシウムシグナル調節などの生命維持に必要不可欠な役割をはたしている重要なオルガネラであり、その機能不全により、がん、糖尿病、心筋梗塞、虚血性疾患など様々な疾患を引き起こすことが知られ、ミトコンドリアへの薬剤送達が不可欠である。第4級ホスホニウムカチオンはリン原子に4つの炭素置換基が置換したカチオン種であり、医薬・機能性材料など広い用途に使われるが、ホスホニウムカチオンがミトコンドリアに局在する性質を利用して、さまざまなホスホニウム塩化合物がミトコンドリアを標的とする医学研究や疾病治療に活用されている(総説:Chem. Rev. 2017, 117, 10043)。
しかし、従来のホスホニウム化合物の合成方法は、ハロゲン化アルキル及びアミン等が有する官能基を手掛かりとして行うので、出発物質が限定的で、合成可能なホスホニウム化合物の構造が制限されることが多かった。更に、従来法はそれら官能基を変換して導入するためその機能が損なわれ、出発物質本来の物性及び生理活性が失われる課題があった。
今回発明者らは、可視光(青色LED)と光触媒(イリジウム触媒)のみを使用し、汎用性の高いアルコール又はアミンとビニルホスホニウム化合物とが反応し、炭素-水素結合を置換して第4級ホスホニム化合物を与えることを見出し、新たな合成方法を確立した。
※左:Xは水酸基またはアミノ基。右:イリジウム触媒。
Data
本方法での薬剤分子へのホスホニウム導入例と適用範囲を下記に示す。
<Bucetinへのホスホニウム導入例>
<本ホスホニウム導入適用範囲例>
Expectations
現段階:ホスホニウム化合物合成の実証、適用範囲の確認が完了。引き続き、メカニズム研究を継続。
次段階:①要望による物質へのホスホニウム導入実証(共同研究)
②導入薬剤の活性、性能評価・開発実証(共同研究)
③量産体制確立による本プロセスの産業化。
①②は研究室との共同研究/共同開発が可能です。③はパートナー企業様主体での検討を希望しております。
本技術を用いた対象物質のホスホニウム化合物の評価、または開発コラボレーションに関心のあるパートナー企業を募集しています。先ずは、技術の詳細説明とディスカッションから、スタートさせていただければ幸いです。
Publication
Masaki Y et al, ChemCatChem 2022, 14, e202200744
Patent
国内出願済(未公開)
Researchers
国立大学法人北海道大学大学院理学研究院有機金属化学研究室 増田侑亮、澤村正也、吉田真樹
Please click here to see English summary.
以下のフォームからお問い合わせください