ワクチン開発用途で注目される膜小胞をターゲットとする新規スクリーニング

2023/12/14 14:39 By Tech Manage

細菌由来膜小胞の効率的な検出技術による、新規物質探索のご提案

Advantages

  • 新たなワクチンシーズ・核酸デリバリー技術などの探索/候補物質のライブラリー化が可能
  • 高い膜小胞形成能を示す細菌株ほど高標識される検出法
  • FACS技術によって、集団内の高い膜⼩胞放出細菌を分離可能

Background and Technology

 細菌が細胞外に産生する「膜小胞」(Membrane vesicle;MV)は、直径20-400nmの生体微粒子である。グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、アーキアなど様々な原核生物が細胞外にMVを放出することが知られており、DNA、RNA(mRNAs、rRNAs、tRNAs、sRNA)、タンパク質、細菌シグナル(低分子化合物)、抗生物質などが含まれていることが明らかにされている。機能としては、由来細菌の免疫活性化物質を宿主細胞に送達し、免疫反応を活性化する機能、微生物間の伝達物質のデリバリーといった様々なものが知られる。
腸内細菌が産生するMV が免疫優性抗原の運び屋として機能し、元の細胞よりも高い自然免疫および獲得性免疫の誘導能を有することから、MV は効率的ワクチン開発のシーズとして期待されている。すでに欧州において、MV 様の髄膜炎菌のワクチン開発がなされ、BEXSERO として商品化されている。CRISPR研究のノーベル賞受賞者グループも細菌MVを核酸(DNA/RNA)のキャ リアとして RNA 輸送に用いる研究に乗り出している。 
 細菌由来MVを生物工学的に応用するためには量産等の確立が必要となるため、MV産生菌を検出する技術が必要不可欠である。従来の膜小胞の形成の工程では、細菌のMV産生能を検出できないという問題点があった。本発明者らは、MV産生菌に、高曲率の脂質二重膜を選択的に標識する蛍光プローブ(ApoC-NR)を接触させることで、様々なMV産生菌が蛍光プローブで標識されることを見出した。さらに、このプローブで標識されたMV産生菌の蛍光を指標として、高MV産生菌の検出、及びMV産生菌の分取を可能とする方法を見出し、技術を完成させた。

Data

高曲率膜認識プローブを用いた膜小胞産生菌Buttiauxella agrestis JCM 1090T ΔtolB株)の標識

ApoC-NRを用いた場合、MV産生能が低い野生株では細菌から蛍光が観測されなかったのに対し、MV形成能が過剰なΔtolB株では、細菌から蛍光が観測された。また、コントロールプローブApoCmut-NRを用いた場合、ΔtolB株から蛍光は観測されなかった。このことから、高曲率膜認識プローブを用いた検出がMV産生菌において可能であることが示された。
※ΔtolB株は野生株に比べて約15倍のMV形成能を有し、放出されたMVは小型、多重膜小胞、多胞膜小胞など多岐にわたる形状の細菌株。

Expectations

現段階:膜小胞高産生細菌を検出、分離プロセスの確立とコンセプト実証を完了。
次段階:① 対象細菌、対象テーマ(ワクチン/デリバリーシーズスクリーニング)における細菌スクリーニング
    ②スクリーニングされた細菌の活性、性能評価・開発実証。
    ③量産技術の開発による本プロセスの産業化。
いずれも研究室との共同研究/共同開発が可能です。③はパートナー企業様主体での検討を希望しております。
本技術・プロセスを用いた細菌の評価、または開発コラボレーションに関心のあるパートナー企業を募集しています。先ずは、技術の詳細説明とディスカッションから、スタートさせていただければ幸いです。

Patents

  • 国内出願済(未公開)

Researchers

国立大学法人静岡大学 学術院工学領域 講師 田代陽介
国立大学法人東北大学 大学院理学研究科 准教授 佐藤雄介


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