副作用フリーな避妊薬開発のための新規ステロイドホルモン膜受容体アンタゴニスト

2023/11/20 11:05 By Tech Manage

~海藻Padina抽出物由来の物質2-ヒドロキシペンタン酸~

Advantages

  • ますますニーズの高まる副作用の無い避妊薬への新たなアプローチ
  • 魚類における実証完了、およびマウスにおける実証も完了し公開間近
  • 本研究室オリジナルの合成mPRタンパク質でのHSPによって取得された物質

Background and Technology

従来の避妊薬はプロゲステロン類似化合物であり、ステロイド骨格をもつ物質群である。従ってステロイド性化合物の副作用を逃れず、一般的には、悪心や嘔吐、めまい、疲労感、頭痛、乳房の圧痛、下腹部痛などの症状が引き起こされるが、これを回避する薬剤はもたらされていない。

本発明者は、長年ステロイドホルモンの生体への作用の研究を行ってきた。従来よりステロイドホルモンの作用として、ゆっくりと細胞に作用するゲノミック作用と、急激に細胞に作用するノンゲノミック作用が知られるが、本発明者は、このノンゲノミック作用を細胞に伝達する、細胞膜プロゲステロン受容体(mPR)に焦点を当てた研究を推進してきた。その過程で、近年mPRタンパク質の人工合成に成功し、これによって、mPR受容体に作用する物質を、ハイスループットでスクリーニングできることが可能となった。また一方で、本発明者は、うみうちわ(海藻Padina)が生息する海域の環境ホルモンが、魚類に与える影響を調査する目的で、同海域で採取した海水から精製した抽出物の研究を推進し、海藻Pandiaからの抽出物の精製に努めてきた。そして、これら研究テーマを連動したアプローチによって、海藻Pandiaから精製した化合物が、mPR受容体へのアンタゴニストとして作用することが明らかにされた。この抽出物を核磁気共鳴分析(NMR)したところ、2-ヒドロキシペンタン酸(2-HPA)であること、またこれによる魚類生体における卵成熟・排卵抑制効果が実証された。

Data

  • ゼブラフィッシュにおける、2-HPA及びその類縁化合物による卵母細胞の成熟及び排卵の阻害試験

2-HPAに加えて、2-ヒドロキシ酪酸(2-Hydroxybutyric acid)、吉草酸(valeric acid)、2-ヒドロキシヘキサン酸(2-Hydroxyhexanoic acid)、1,2-ペンタンジオール(1,2-Pentanediol)及び3-ヒドロキシ酪酸(3-Hydroxyvaleric acid) を用いて行った結果、2-HPAのみが、動物個体において卵母細胞の成熟及び排卵を阻害できることが示された。


Expectations

現段階:2-HPAによる排卵・卵成熟抑制効果のコンセプト実証が完了(年度内にマウス実証も完了・公開予定)。
次段階:①詳細メカニズム研究、その他実証、製剤最適化開発
    ②臨床開発
上記の開発を進めていただける、開発パートナー企業を募集しています。先ずは、技術の詳細説明とディスカッションから、スタートさせていただければ幸いです。

Publications

[1] Tokumoto T,et al.,Research Square  https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-3360164/v1
[2] Tokumoto T,et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications 592 (2022)1-6

Applicant

国立大学法人 静岡大学

Patent

出願済(未公開)

Researcher

静岡大学 創造科学技術大学院 バイオサイエンス専攻  教授 徳元俊伸


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