NK1受容体拮抗薬による新たな反射性失神治療・予防薬開発

2023/12/22 18:41 By Tech Manage

Advantages

  • 確立された処方の無い失神領域への新たなソリューション
  • 制吐剤・鎮咳薬等に応用される既知物質による、新規/ドラッグ・リポジショニング/リパーパシングアプローチ
  • 経口投与で、ラットモデルおよび疾患犬で効果実証済

Background and Technology

反射性失神(reflex syncope)は、脳血流が一過性に低下することで生じる失神で、原因疾患が明らかでない失神発作の多くを占める。反射性失神は突然起こり得る失神で、例えば自動車運転中の失神の原因として最も多く、30~37%といわれている。しかし、反射性失神に関与する中枢神経系の異常要因が特定できていないため、失神が起きそうだと感じるときは外出を控えることや、血圧上昇薬を服用して反射性失神による血圧低下を予防するなどの対症療法しかなく、異常要因をターゲットとした原因療法がないのが現状である。
本発明者らは、反射性失神の要因として中枢のニューロキニン-1(neurokinin-1:NK1)受容体に着目した。NK1受容体は、心血管運動の抑制性調節に関与している尾側延髄腹外側野の多くの細胞で見出されていることから、その拮抗薬が反射性失神を軽減するのではないかと考え、研究を進めた。その結果、ラットにおいて結腸伸展により惹起される血圧低下がNK1受容体拮抗薬・ホスアプレピタントにより抑制されることを見出した。さらに神経活性化をc-Fos免疫染色陽性細胞数で評価したところ、結腸伸展により尾側延髄腹外側野が活性化し、これをホスアプレピタントが抑制することを確認した。本結果を受けて、麻布大学附属動物病院において反射性失神を示す疾患犬へNK1拮抗薬・マロピタントを投与したところ、失神回数の減少が確認された。
以上のように、NK1受容体拮抗薬の反射性失神に対する有用性は、異なる動物、異なる拮抗薬で立証された。

Data

<結腸伸展(CRD)による血圧の低下に対するNK1受容体拮抗薬(NK1A)の効果>



CRD群:横行結腸手前まで挿入したバルーンの圧(40、60、80 mmHg)依存性に平均血圧(MAP)は低下した。

CRD+NK1A群:NK1受容体拮抗薬・ホスアプレピタント前投与は、CRDによる平均血圧低下を抑制した。



<結腸伸展(CRD)による血圧低下に関与する中枢(尾側延髄腹外側野:CVLM)の変化とNK1受容体拮抗薬(NK1A)の効果(c-Fos陽性細胞数で指標化)>

CRD群:CVLMの活性化が認められた(Controlに比べてc-Fos陽性細胞数増加)。
CRD+NK1A群:ホスアプレピタント前投与は、CRDによるCVLM活性化(CRDによるc-Fos陽性細胞数増加)を抑制した。

Expectations

現段階:NK1受容体阻害による反射性失神抑制効果のコンセプト実証が完了
次段階:①詳細メカニズム研究、製剤最適化開発
    ②臨床開発
上記の開発を進めていただける、開発パートナー企業を募集しています。
先ずは、技術の詳細説明とディスカッションから、スタートさせていただければ幸いです。

Patents

出願済(未公開)

Researchers

麻布大学 獣医学部 獣医学科 教授 折戸 謙介 


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