ポンプを使用せず、基材圧力を制御可能な装置構造
Advantages
5-10mmの充分な厚みのあるゲル形状を保ち、高品質な細胞が培養可能。
目的オルガノイド別の「圧力」「ゲルの硬度」「培養液の流速」がコントロールしやすい装置構造。
肝臓細胞、すい臓細胞の培養実績あり。
シリンジ形状での量産化、閉鎖系への改良が容易。
スクリーニング用96wellでの培養達成を計画中。
Background and Technology
ワクチン開発や幹細胞の分化・培養による再生医療の開発の活発化の流れに伴い、in vivo条件での自然な体液の流れを再現しつつ安定的・効率的な細胞培養を目的として“灌流培養法”が用いられている。また、灌流培養の中でも、培養効率、生体細胞形状の再現、分化能といった観点から3次元細胞培養へのニーズが高まっている。3D細胞培養の基材としてはコラーゲンなどのゲルが用いられるが、従来の灌流培養法では、灌流に用いられるポンプによる加圧で基材が変形し、細胞を基材内に適切に保つことができず安定培養ができない課題があった。また、基材変形によって厚み方向の3D構造が保てず、組織内部の環境を再現する細胞培養の実現が困難だった。
本技術は、こういった課題に対し、根本的な構造を変える発想を導入した。それが、「水位差灌流培養方式」である。本装置は、水位差によって第1の培養液と第2の培養液の間に圧力差を生じさせ、基材中に培養液を浸透させるメカニズムの培養液灌流方式である。基材底面に空いている穴のサイズ・密度を調整することによって圧力差を調整可能なため、基材への加圧を調整し、厚みのあるゲル基材の形状を保つ圧力設定とし、3次元的な培養が可能となり、従来の3D培養では1㎜厚程度の基材が用いられるが、本技術では5-10㎜厚の基材による培養実績が示されている。
また、本装置は間葉系幹細胞などのオルガノイド培養に用いることを目的としている。オルガノイド培養は、目的とする組織、培養期間に培養条件がコントロールされる必要がある。本プロセスは基材の厚さ、硬度、流速が制御可能なため、今後の幅広い培養の最適化が可能である。加えて、量産化に関してもシリンジ灌流装置という構造によりスケールアップの可能性が実証済である。
肝臓モデル細胞(HepG2細胞)
での培養実績
Data
左:コラーゲンゲル基材の厚さを変えた肝臓モデル細胞(HepG2細胞)の培養。厚さ10.0 ㎜までのゲルで水位差灌流培養を行うことに成功。
右:コラーゲン濃度を変えた肝臓モデル細胞(HepG2細胞)の培養。1.2-2.4 mg/mLの濃度のコラーゲンゲルで細胞は80%以上が生存していた。
Expectations
現段階:
水位差潅流培養の基本構造とシリンジ潅流培養のラボレベル実証が完了。
次段階:
①所望の細胞別、または細胞汎用的な培養装置の開発・評価・実証。
②96well灌流培養のウェル作製と実証を行い、培養スクリーニング系の確立。
③シリンジ灌流培養の実用機の開発。
上記①②③の材料・機材提供・製品開発、実用化・評価コラボレーションに関心のある協働パートナーを募集しています。所望の細胞、オルガノイド培養での評価・実証。
Patents
出願済(未公開)
Researchers
国立大学法人北海道大学 大学院先端生命科学研究院
石原 誠一郎、石原 すみれ、芳賀 永
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