高純度イオン液体合成装置 オンデマンド・小ロット/多品種供給が可能に

2022/04/08 15:17 By Tech Manage

電場と膜透過でのイオン置換法による連続フローシステム

Advantages

  • 副生成物、水以外の除去物質が生じない新たな合成プロセス
  • 純度>98%(98.8% BMIM+NO3-)、アニオン・カチオン両ソースの変換率は平均99%
  • 3種類のカチオンと5つの陰イオンで9種のイオン液体合成が実施済み

Background and Technology

 陽イオンと陰イオンの組み合わせからなり、常温で液体である「イオン液体」は、水、有機溶媒に続く第3の溶媒といわれ、化学反応や分離の場、熱媒体、電池内部液などへの応用が進められているが、イオン液体(C+A-)の合成は、水や沈殿を生成する陰イオン(OH-やCl-など)や陽イオン(H+やAg+など)を対イオンとした2つの原料物質(たとえばC+Cl-とAg+A-)を用意し反応させる必要があり、高純度のイオン液体を得るためには、生じた副生成物(AgClやH2Oなど)を完全に取り除かなければならなかった。

 発明者らは、長期にわたり溶存イオン分析ためのイオン抽出デバイスの研究を行う中で、流動溶液の中のイオンの取り出し・導入インラインデバイスを開発してきた。
これらの知見の蓄積から、電場と膜透過による適切流量の原料溶液に含まれる陰イオンの除去と同時に目的とする陰イオンを導入する、イオン置換によるイオン液体の合成法に達成した。
本プロセスで得られたイオン液体の純度は>98%以上であった(不純物がCl-やF-などの揮発性酸である場合には、水を蒸発させることで同時にこれらの不純物を除去でき、より純度を向上させることができた)。

 原理的には、陽イオンの置換による合成、陽イオンと陰イオンを同時に導入する手法も可能である。
また、デバイスに溶液を導入する送液系にセレクションバルブを組み込み、陽イオンと陰イオンの組み合わせをコンピューターで自在に制御する合成システムも構築可能である。
さらに、近年検討が進められている1つの陽イオンに異なるいくつかの陰イオンをもつ混合イオン液体も導入量を電流値で制御することで任意の割合のものを合成できる。

 本発明を用いたイオン液体製造装置によって、様々な組み合わせのイオン液体の評価、小ロット・多品種の製造が容易になり、イオン液体を用いた製品開発における研究上の基盤技術となる。
また、本発明のシステムをアレイとすることでスケールアップも可能であり、研究用途から実用スケールまで対応できるイオン液体供給装置を構築できる。

Data

Expectations

-現段階: 既に9種のイオン液体の合成を行い、高い純度、変換率を実証済みです。
-次段階: 高純度、オンデマンド、フロー合成ニーズをお持ちの、イオン液体メーカーの協働パートナーを募集しております。各企業様がご要望のイオン液体で、本システムのパフォーマンス評価・技術改良を共同で行い、本技術の実用化を目指したいと考えております。先ずは、技術の詳細説明とディスカッションから、スタートさせていただければ幸いです。

Patents

国際出願済

Researchers

熊本大学 大平慎一、戸田 敬


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