自家軟骨の採取・培養が不要な軟骨欠損治療へ 骨接着強度の高いゲルインプラント材料

2024/09/11 11:44 By Tech Manage

骨自発浸透によるゲル/ハイドロキシアパタイトハイブリッド層が形成する柔軟性・強靭性・強接合性

Advantages

  • 本研究室で開発された高強度ダブルネットワークハイドロゲル(DNゲル)によるオリジナル材料
  • ウサギ大腿骨顆部の骨欠損部への埋植実証済み
  • サンプル提供、製造・成形技術の提供・アドバイスが可能

Background and Technology

損傷および摩耗を受けた膝軟骨などの関節は、生体内では自然治癒せず治療が必要となる。膝の損傷の増加と低侵襲手術の普及により、膝の軟骨欠損修復市場は、大幅に拡大している。また、一定程度の大きさまでの軟骨欠損は、「モザイクプラスティー」や「自家培養軟骨移植術」など、正常軟骨を採取し損傷部に移植する術式が一般に適用されている。しかしながら、これらの治療は、正常軟骨の採取が必須である点や、前者は修復箇所と同様の大きさの正常軟骨が必要なため、大きな損傷には適用不可であり、後者は採取と移植時の2回の手術を伴い、患者の負担が大きかった。
これらを解決するため、研究室では、オリジナルの“高強度DNゲルを開発し、生体軟骨と同レベルの強靭性、含水性で、表面は生体軟骨並の高い滑り性を持つ人工軟骨として用いるための実証研究が進められてきた。一方で、臨床応用を想定し、本高強度ハイドロゲルを軟骨欠損部に埋植した場合、ゲルが母床としての骨組織に固定される必要があるが、ゲルにはそのような骨組織との接合能が認められず、骨組織との接合が課題となっていた。
この課題に対し、本研究室は、DNゲルの表層に骨の無機主成分であるハイドロキシアパタイト(HAp)粒子を複合化させる方法を見出し、生体内のゲル-骨界面に、ゲルと骨のハイブリッド層を自発的に形成させることで、強靭なハイドロゲルを骨に結合させる方法の確立に成功した。
本材料の埋植によって、軟骨欠損治療は、ドナーの正常軟骨の採取が不必要となり、高齢者や手術の負担を避けたい患者へのより良い治療法の提供が可能になる。

Data

A: ウサギ大腿骨に埋植されたHAp/DNゲルプラグの模式図。
B: i,ii) DNゲル埋植後4週間のマイクロCT画像。iii,iv) HAp/DNゲルの埋植後4週間のマイクロCT画像。
C : HApを複合化したDNゲル(上図右)と、そのインプラント材料見本(下図、HApは未処理)。

Expectations

現段階:HApを複合化したDNゲルのin vivoインプラント実証が完了した段階。
次段階:①サンプル提供による、機械強度などの味見評価
    ②DNゲルの製造装置、金型などの提供による、製造技術の確立
    ③臨床開発(長期動物試験による効果・安全性の評価、治験による有効性評価、術式/デバイス開発など)
上記①②③の開発コラボレーションに関心のある協働パートナーを募集しています。先ずは、技術の詳細説明とディスカッションから、スタートさせていただければ幸いです。

Patents

  • JP7248967,US11492433,KR102422864,CN111727223,EP3786235A4
    ハイドロゲル及びハイドロゲルの製造方法
  • 特開2023-180810,WO2023238822A1
    人工軟骨インプラントおよびその製造方法

Researchers

国立大学法人北海道大学 先端生命科学研究院 グン 剣萍、黒川 孝幸、野々山 貴行


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