酸性条件、常温条件下で高い活性を示す脂質分解性酵素
Advantages
- エステル加水分解による生分解性プラスチック分解促進、土壌改質性能等幅広い機能性・用途を期待
- 酸性(pH3.5-5)、常温(10-35℃)の至適条件により、中性下で反応を停止可能
- リコンビナント酵素(PgLip019028)を取得し、Pichia酵母発現系での製造方法を確立済み
Background and Technology
リパーゼは、脂質のエステル結合を加水分解する酵素の総称であり、その反応は可逆性であるため、反応条件により、エステル化反応およびエステル交換反応の触媒としても作用することが知られ、農薬製造、医薬品製造、化粧品製造、油脂製造、食品加工、食品製造、食品添加物の製造等において幅広く産業利用されている。 リグニン分解性担子菌プレビオピシス・ギガンテア(Phlebiosis gigantea、以下、P.gigantea)は、抽出成分を豊富に含む伐採したばかりの針葉樹に迅速に侵入できることが知られている。P.giganteaは針葉樹を分解する際にリパーゼを分泌することが知られている。
本発明者は鋭意研究の結果、P.giganteaが分泌する複数のリパーゼのなかで、従来のリパーゼと比べて酸性条件かつ低温条件で高いリパーゼ活性を有する特徴的な性質を有する酵素を同定し、更にリコンビナント酵素(PgLip19028)の製造にも成功した。また、生分解性プラスチック分解性能試験を実施中。
Data
得られた粗酵素のリパーゼ活性の測定結果。PgLip19028の最適な反応温度およびpHをそれぞれ、25℃およびpH4.5であった。また、pH3~pH5および10℃-35℃の範囲で相対活性40%以上を示し、これらpH条件または温度条件が反応に適することが分かった。
GC-MS分析の結果。トリグリセリドはリパーゼ反応後、有意に減少した。一方、ジオレイン、モノオレインおよびオレイン酸が最終産物として同定された。さらに、PgLip19028は、針葉樹抽出物中のトリグリセリドおよびジグリセリドから、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびパルミチン酸を遊離させた。これらの結果は、本リパーゼが、種々の炭素鎖長および不飽和結合を有する広い種類の脂肪酸を生産することを示す。
Expectations
本酵素の実用化、製品化に関心をお持ちの企業、または、意図する用途における性能評価や共同研究に関心をお持ちの企業がおられましたら、お気軽にご連絡ください。
Publications
Hori,Chiaki. et al. Omics analyses and biochemical study of Phlebiopsis gigantea elucidate its degradation strategy of wood extractives. Nature Scientific Reports1,12528 (2021).
Patents
出願済(未公開)
Researchers
国立大学法人北海道大学 工学研究院 応用化学部門 生物工学分野 助教 高須賀 千明
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