高効率CO2処理のための固体炭素捕集用の新たな触媒・装置

2021/01/12 00:01 By Tech Manage

低温プロセスと高捕集率を実現する金属含有コーティング触媒

Advantages

  • 「メタンドライ改質」と「炭素連続捕集」を触媒劣化がほとんどなく連続で処理可能な装置
  •  炭素源からの炭素捕集率は、従来プロセスの2-10倍にあたる20.3%を達成
  •  各プロセスにおいて、従来の高温加熱反応を大幅に低温化

Background and Technology

 二酸化炭素の排出量削減のために、二酸化炭素回収および貯留の動きが世界的に活発化している。効率的な貯留の観点では、ガスよりも体積の小さい固体の状態で回収されることが望ましいとされているが、下記反応式のような現在主流の固体炭素析出技術プロセスでは、1000℃以上の非常に高温の加熱が必要である。


 本発明者らは、①の後のプロセスを、下記のプロセスとし(④⑤は同時に進行)これに新たな触媒技術を導入することで、従来のドライ改質プロセスから固体炭素捕集プロセスを連続式で、高温加熱を低温化し、且つ炭素捕集率も大幅にアップするプロセス装置を構築した。コアとなる技術は、ドライ改質プロセスと固体炭素捕集プロセスの“触媒”とその構造体である。


 ③ドライ改質用触媒は、基材に、ハニカム状のフィンを活性処理し、アルミニウムゾルに浸漬し、マッフル炉で焼成したアルミナ多孔質体を用いたNi/Al2O3構造体触媒である。これによるメタン及び二酸化炭素の転嫁率は80%。

 ④⑤固体炭素捕集用触媒は、酸化鉄(Fe3O4)を含む多孔質のコーティング層を形成したステンレス鋼管による層状触媒を複数本とした構造である。

 本装置により、固体炭素捕集率は、最適化された温度設定により、最大20.3%に達し、触媒劣化のない合成ガス(H2,CO2)製造がされている。


Data

左下図:ドライ改質及び炭素捕集プロセスによる二酸化炭素とメタンの転換率(上段)及び、出口ガス組成(下段)。ドライ改質(DRM)のみのプロセスにおいて、CO2及びCH4の転換率が80%であり、出口ガスにおいて、CO2及びCH4が10%以下、COとH2で90%を占めていることから、③の反応が起こっていることが分かる。DRMと炭素捕集プロセスを稼働させた場合、⑤の反応により、出口ガスではCOの割合が減少し、CO2の割合が増加するため、見かけ上CO2の転換率が大幅に減少している。また、両プロセス後の合成ガス組成はH2/CO= 2.0である。さらに、再度DRM工程のみで稼働させても、炭素捕集プロセス前後でのCO2及びCH4の転換率及び出口ガス組成が変化しないことから、炭素捕集プロセスを稼働させることで、ドライ改質プロセスでの触媒劣化を抑えられているということが分かる。


右下図:炭素捕集部で実際に析出した炭素の様態及び炭素捕集率(CCR)。入口部分に近いほど炭素析出量が多いことが分かる。また、CCRは20.3%であることが分かった。

Publication

W.Kawasaki, C.Fukuhara et al., Journal of CO2 Utilization, 22 (2017) 91-96.

Researcher

国立大学法人静岡大学 大学院総合科学技術研究科 工学専攻 教授 福原 長寿先生

Expectations

本固体炭素捕集装置の実用化開発に関心をお持ちの企業、または、CO2処理プロセスの開発に関心をお持ちの共同研究パートナー企業を探しております。

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