高純度膜受容体によるハイスループットスクリーニング
Advantages
- 世界初、活性を有する精製ヒト mPR(membrane progesterone receptor)とその発現酵母
ウエスタンブロットにおける mPR タンパク質検出時の信頼性の高いスタンダード
他ステロイド膜受容体(mER、mAR 等)に関しても、類似方式で単離可能性あり
- 新規プロゲスチン結合アッセイ
ヒトmPR の新規リガンドの大量スクリーニングが可能に
リガンド結合時の mPR 活性測定が可能
テスト化合物への特殊な処理を必要とせず、添加・蛍光測定のみにより結合有無を評価可能
Background and Technology
プロゲステロンは子宮内膜を受精卵が着床しやすいように整え、妊娠を助ける黄体ホルモン(卵成熟誘起ホルモン)として知られている。このプロゲステロンの類似物質であるプロゲスチンは、避妊薬、子宮内膜症薬、免疫抑制剤、抗炎症剤として用いられている。従来、新規プロゲスチンのスクリーニング標的としては、核内受容体が用いられていたが、遺伝子転写を通した反応を経由し、実際に作用するまでに時間がかかることから、プロゲスチン処方量の調節が困難であった。一方、膜受容体を標的とすることで、遺伝子転写を伴わず、すばやく作用するプロゲスチンの同定が可能と考えられる。
今回プロゲステロン膜受容体の一種であるヒト mPRαの精製に成功し、精製 mPRαのプロゲステロン結合活性を確認した。また、プロゲスチンの HTS を可能とするため、ヒトmPRα と量子ドット(GQD)の複合体を作製した。この複合体と標識プロゲステロンを予め結合させたものにテスト化合物を加え、蛍光強度を測定することで、テスト化合物の mPR 結合性を評価することが可能となる。また、ヒト乳腺癌細胞(MDA-MB-231)に mPRα及びルシフェラーゼ遺伝子(GloSensor)を産生する細胞株を保有しており、リガンド結合による mPR 活性の測定ができる。
左:精製タンパク質の SDS-PAGE像(CBBR 染色)。ヒスチジンタグ抗体によるウエスタンブロット解析によっても合成ヒトmPRであると特定された。
右:精製ヒト mPR とプロゲステロンの結合測定。スキャッチャ―プロット解析より、精製 mPR に単一の結合部位があることが分かる。
左: GQD の周囲に mPR を結合させた複合体(mPR-GQD)へ標識プロゲステロンを結合させている。この複合体は 360 nmの光を照射することで GQD から 460 nm の蛍光を発し、460 nm の光を受けた標識プロゲステロンが励起し、最終的に 519nm の蛍光を発する FRET を利用している。この複合体へ添加したテスト化合物が mPR 結合活性を持っていた場合、既に結合している標識プロゲステロンと競合することから、蛍光強度が減少する。
右: テスト化合物としてプロゲステロンを加えた場合の、BSA 複合体と mPR 複合体の蛍光強度の変化。BSA ではテスト化合物の有無によらず、蛍光強度が変化しない。一方 mPR 複合体の場合、テスト化合物を加えた場合に蛍光強度が減少している。
Patents
特許第 6516956 号 「ステロイドホルモン膜受容体の精製方法」(製法特許)
特許第 6795214 号 「ステロイドホルモン膜受容体の精製方法」(精製膜受容体特許)
Publications
[1] Tokumoto T,et al., (2015) PLOS ONE 10(9), 1-16.
[2] Tokumoto T,et al., (2015) Steroids, Aug;100: 21-26.
Researcher
静岡大学 理学部・創造科学技術大学院 統合バイオサイエンス部門 教授 徳元俊伸先生
Expectations
本精製 mPR 及び本 HTS を研究用に販売することに関心をお持ちいただける企業を探しております。
また、mPRαの結晶構造解析を通した、アゴニストやアンタゴニスト、アステロリックモジュレーターなどリガンド情報を解析する研究や、その他ステロイド膜受容体の単離、機能解析に関しての共同研究も歓迎しております。
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