重症薬疹(SJS/TEN)における新規治療薬:FPR1阻害剤

2025/06/30 12:19 - By Tech Manage

ケノデオキシコール酸によるネクロプトーシス制御を通じた表皮細胞死と脱落の抑制

Advantages

  • ネクロプトーシスを標的化:皮膚の壊死を引き起こす炎症性細胞死(ネクロプトーシス)とシグナル伝達に着目した新規治療戦略
  • 既承認薬CDCAを活用:胆石症治療薬として承認済みのCDCAを再適用することで、安全性が高く、開発リスク・コストを大幅に低減
  • 重症薬疹モデルマウスにおけるCDCAの有効性実証:SJS/TEN患者由来の免疫細胞を移植したモデルマウスにおいて、CDCAが症状発症を有意に抑制することを確認

Background and Technology

スティーヴンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome:SJS)および中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)は、皮膚や粘膜に壊死性病変を引き起こす重症薬疹である。ステロイド全身投与などの対症療法が治療の中心であるが、非常に致死率が高い疾患(TEN:29.9%)であり、薬疹の発症メカニズムに基づいた新たな治療戦略が求められている。
発明者らは、薬疹における主要な細胞死メカニズムとして、従来注目されていたアポトーシスに加え、ネクロプトーシスが発症に深く関与することを明らかにした。ネクロプトーシスのシグナル伝達に関与するFPR1(Formyl Peptide Receptor 1)を標的とし、化合物ライブラリーおよび既知のFPR1阻害剤から治療候補の探索を行った。その結果、ケノデオキシコール酸(CDCA)がFPR1を選択的に阻害し、SJS/TENモデル細胞においてネクロプトーシスを抑制する効果を示した。さらに、SJS/TEN患者由来の免疫細胞を移植した重症薬疹モデルマウスにおいて、CDCAの投与により症状の発症が有意に抑制され、FPR1阻害による治療効果がin vivoで実証された。
CDCAは胆汁酸製剤の一種であり、すでに胆石症治療薬として承認されている既存薬であるため、安全性や薬物動態に関する知見が豊富に蓄積されている。このことから、既承認薬のリポジショニング等による効率的な臨床応用が期待されている。

Data

  • モデル細胞におけるCDCAのネクロプトーシス抑制効果:不死化培養表皮細胞にFPR1刺激を加えることでネクロプトーシスを誘導するSJS/TENモデル細胞において、候補薬剤の細胞死抑制効果を評価したところ、CDCAが著明な細胞死抑制効果を示した。(図1)
  • モデルマウスにおけるCDCAの有効性:免疫不全マウスにSJS/TEN患者由来の免疫細胞を移植し原因薬剤を投与して症状を誘導したモデルマウスを用いてCDCAの有効性を確認した(図2)。14日間原因薬剤のみを投与したマウスは100%(7/7匹)眼瞼結膜炎を発症した一方、CDCAを併用投与したマウスでは、発症率が0%(0/7匹)であった。 

Expectations

新潟大学では、CDCAの投与経路や剤型変更、再薬事承認を通じた新薬リポジショニングの実現に向けて、共同研究やライセンス契約にご関心をお持ちの企業様との連携を希望しています。新潟大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示も可能であるほか、研究者との直接のご面談によるお打ち合わせも随時対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

Patents

特許出願中(未公開) 

Researchers

阿部 理一郎 先生、長谷川 瑛人 先生 (新潟大学 医歯学総合研究科 分子細胞医学専攻細胞機能講座 皮膚科学分野) 

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