光毒性を激減する次世代光免疫療法プラットフォーム

2025/10/21 13:52 - By Tech Manage

標的認識連動型活性化機構を備えた抗体光増感剤複合体

Advantages

  • 非特異結合/血中残存薬剤の自然光による光活性化リスクを大幅に低減、現状の1週間入院治療を外来治療に転換する可能性
  • 様々な抗体・増感剤に汎用的に使える可能性のあるコンセプト技術

Background and Technology

光免疫療法(アルミノックス™など)は、光増感剤抗体複合体を標的癌細胞に集積させ、近赤外光の照射により活性酸素を発生させて特異的に癌細胞を破壊する療法で(*)、抗体の選択により理論的に多くの癌に適用できることから、手術・化学療法・放射線療法・免疫療法に続く「第5の治療法」と期待されている。しかし、普及の最大のボトルネックは「残存薬剤による光毒性リスク」であり、現在のプロトコルでは、光毒性回避のために約1週間の厳格な暗室管理入院が必須であり、これが患者負担と医療コストを増大させている。
本技術ではリンカーで接続された光増感剤と消光剤を抗原結合部位のN末端に固定する。抗原に結合したときだけリンカーが露出し加水分解で消光剤を切断する。血中の薬剤やFc部分への非特異的に結合した薬剤は活性化することがないため光毒性を根本的に抑制できる(下図)。

*現行の「光線力学療法」が活性酸素で細胞にダメージを与えるのに対し、アルミノックスでは活性酸素により親水基が脱離して疎水化した光増感剤の凝集が細胞膜を破壊して死滅させている点で異なる。

Data

  • 光増感剤と消光剤にそれぞれメチレンブルー(MB)とブラックホールクエンチャー3(BQ)、抗体にトラスツズマブ(HER2抗体:Traz)を使用した複合体(本技術:BQ-MB-Traz)と現行薬剤を模したコントロールとして光増感剤をFc領域に固定した抗体(MB-Traz)を作製。
  • HER2陽性細胞において、BQ-MB-TrazのMB-Trazと同等の細胞障害効果を確認(下図下:中・右)。一方、MB-TrazがHER2陰性細胞に対して非特異的な毒性を示したのに対し、BQ-MB-Trazは高い選択性を維持することを実証(下図上:中・右)。

Expectations

本技術のライセンスの下で次世代光免疫療法薬剤を共同開発するバイオテック/製薬企業を募集します。
フェーズ1:In-vivoでのコンセプト実証(企業)
フェーズ2:対象抗体・光増感剤の選択(企業)、複合体の設計・製作・最適化(企業・大学連携)
フェーズ3:複合体の性能評価(企業)
※初期評価として作製済の複合体を提供可能(有償)

Patents

東京科学大学より特許出願中(特願2025- 57686:未公開)

Publication

ACS Omega 2025, 10, 24, 25596–25604(https://doi.org/10.1021/acsomega.5c01083

Researchers

北口哲也准教授(東京科学大学 総合研究院 化学生命科学研究所)

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