腸内細菌産生EPA誘導体によるムチン分泌促進・腸管上皮バリア機能強化
Advantages
- 消化管内産生物質/腸内細菌の補充であり低副作用リスク
- 新しい予防・治療コンセプトであり併用効果にも期待
Background and Technology
潰瘍性大腸炎(UC)は大腸から直腸まで慢性炎症を引き起こす疾患である。食生活の変化などにより免疫機構が正常に働かなくなり、炎症性サイトカインを産出することで炎症性腸疾患が引き起こされる。内科的治療薬は複数あるが、効果がある患者は約50%に過ぎず、未だに多くの患者が症状に苦しんでいる。
2型自然リンパ球(ILC2)の発見者として知られる茂呂和世先生の研究グループは、20歳未満での虫垂切除が潰瘍性大腸炎の発症リスクを低下させるという報告を元に、虫垂切除による腸内細菌叢の変化がタフト細胞>ILC2>杯細胞の活性化カスケードを介してムチン産生を増加させることで腸管上皮のバリア機能を向上させ、UCの症状を緩和していることを発見した。さらに、タフト細胞の活性化/過形成に寄与する分子を不飽和長鎖脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)代謝物である11-ヒドロキシ-エイコサペンタエン酸(11-HEPE)と特定し、食物由来EPAを11-LOX酵素によって11-HEPEに酵素変換する菌も同定した。11-HEPEや11-LOX陽性細菌を用いた潰瘍性大腸炎やクローン病の予防、緩解維持、治療などへの応用が期待される。
Data
- デキストラン硫酸塩(Dextran Sulfate Sodium: DSS)誘発大腸炎に対し、11-HEPE投与が体重減少・大腸短腸化の緩和、組織学的炎症指標・炎症性サイトカインの低下、炎症性細胞浸潤を抑制。
- EPAを11-HEPEに代謝する腸内細菌を同定。
- 虫垂切除を行ったヒトにおいて、腸管上皮組織におけるタフト細胞の増加を観察(UC患者では腸管タフト細胞が減少していることはすでに報告されている)。
Expectations
- 11-HEPEを用いた炎症性腸疾患の治療薬やさらなる誘導体の開発などにご興味のある製薬会社を探しています。共同研究も可能です。
- 本発明により特定した腸内細菌のプロバイオティクスとしての製品化にご興味のある健康食品・サプリメントメーカーを探しています。
大阪大学との秘密保持契約の締結による未公開データ等の開示の他、本発明者とのご面談も可能です。
Patents
特許出願済み(未公開)
Researchers
茂呂 和世 教授(大阪大学医学系研究科・免疫学フロンティア研究センター・生命機能研究科)
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