高効率・低コストのウェアラブル電気化学的バイオセンサ・バイオ燃料電池

2024/10/08 13:55 By Tech Manage

酵素酸化還元反応で生じる電子の電極への授受の効率を上げることでバイオセンサの高性能・低コスト化

Advantages

  • メディエータとして有機レドックス分子を利用することで、低コスト化が期待できる。
  • 酵素や電極、メディエータを固定化させることで連続計測可能なウェアラブルセンサを実現する。

Background and Technology

バイオセンサとは、認識素子にバイオ関連分子を用いたセンサで、特に電気化学的バイオセンサは電極反応と酵素や微生物の酸化還元反応を組み合わせて測定するセンサで、小型・軽量化が可能で広く開発が進められている。代表的な例として、血糖値を測定するグルコースセンサがあり、近年では連続的な血糖値を測定するCGM(Continuous Glucose Monitoring)センサが普及している。最近では、ウェアラブルセンサへの応用が期待されるが、効率、コスト、感度、小型化の面で改良の余地がある。特に、酵素と電極間の電子伝達メディエータの開発が重要となっている。

そこで、本発明者は、酵素と電極との電子授受を効率化する低コストかつ高性能な技術を開発した。具体的には、酵素と電極の間で電子の授受を媒介するメディエータ(右図)として、従来使われている高価なオスミウム錯体の代わりに安価な有機分子(例えば、フェノチアジン系分子やキノン系分子)を用い、酵素とともに電極上に固定化することで、酵素の酸化還元反応を高効率かつ長期間にわたり維持することが可能となった。汎用性の高い材料、および技術であり、グルコース計測のみならず、乳酸などの計測にも応用できる。

血糖値測定用CGMセンサのみならず、ウェアラブルバイオ燃料電池やバイオセンサなど様々なウェアラブル電気化学デバイスに適用することで、低コストで高性能化が実現できる。バイオ燃料電池の仕組みをベースにした自己駆動型センサへも適用可能である。特に、汗や尿などに含まれる成分の連続的なモニタリングなど以外にも、他の酵素や微生物を用いた多様な生化学検査用途にも応用が期待されており、医療分野をはじめ、環境モニタリングや食品産業など、幅広い分野での活用が見込まれる。

Data

  • 酵素とフェノチアジン系分子をポリマーに結合させて電極に固定したところ、グルコース酸化による電流密度が大幅に上昇した。
  • 適切な架橋剤を用いて酵素と電極を化学結合により固定したところ、より高い電流密度が得られた。
  • メディエータ分子が結合した炭素電極をアノードとして用いたところ、メディエータ分子を結合させていない電極をアノードとして用いた場合に比べて高い出力を示した。

Expectations

筑波大学では、本発明を用いてウェアラブルあるいはインプランタブルバイオセンサを開発していただける企業様を探しています。また、本発明はバイオ燃料電池やグルコース以外の生体分子の測定にも応用できると期待されます。バイオ燃料電池開発やバイオセンサの生体分子の迅速・低コストの測定にご興味のある企業様がいらっしゃいましたら是非一緒に開発を進めましょう。
筑波大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示のほか、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能です。

Publications

Morshed J., et al., Biosens Bioelectron. 2023 Jun 15:230:115272.

Patents

特開2023-128505、特開2023-128506、特開2023-176606ほか、未公開特許あり。

Researchers

辻村 清也 教授 (筑波大学 数理物質系)

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