持久力向上に向けたイノシン酸の活用

2025/02/26 11:34 - By Tech Manage

運動後にイノシン酸を摂取することにより筋細胞中のグリコーゲン量が増加し、持久的パフォーマンスが向上する

Advantages

  • 持久力の増強:イノシン酸摂取により筋管細胞数や単位細胞当たりのグリコーゲン量が増加
  • 基礎呼吸量の向上:細胞内でエネルギー生産を担うミトコンドリアの機能向上による

Background and Technology

グリコーゲンは主に肝臓と骨格筋において合成され、余剰なグルコースを一時的に貯蔵する役割を持つ。筋肉に貯蔵されたグリコーゲンは、筋活動時のエネルギー源として消費されるため、持久力パフォーマンスに影響を与える重要な要因である。そのため、マラソンやトライアスロンなど持久系スポーツでは、アスリートが試合前に炭水化物を多量に摂取することでグリコーゲンを最大限に筋肉中および肝臓に蓄えるカーボローディングが広く行われている。
本研究者は、筋芽細胞から筋管細胞への分化過程におけるイノシン酸の影響について検討を行った。その結果、イノシン酸が筋細胞の増殖速度を向上させるとともに、筋管細胞におけるグリコーゲン蓄積を促進することを確認した。さらに、イノシン酸はミトコンドリア機能を向上させ、細胞内の基礎呼吸量を増加させることが実験的に明らかとなった。また、グリコーゲン蓄積促進効果は自発運動を伴う場合に限り発揮されることが示された。これらの結果から、イノシン酸の摂取によりエネルギー供給の効率が向上し、運動後の早期回復や持久力の強化といった効果が期待されることが示唆された。さらに、運動後に高糖質食と併せてイノシン酸を摂取することで、カーボローディングの効果が向上し、持久系スポーツにおけるパフォーマンスの向上が期待される。

Data

  • マウス横紋筋由来の筋芽細胞(C2C12細胞)をイノシン酸を添加した培地で培養して筋管細胞へと分化させ、細胞当たりのグリコーゲン量と、タンパク質1 μgあたりのグリコーゲン量を測定したところ、対照と比較してどちらもイノシン酸を添加した群の方が有意に増加していた(下図)。
  • ミトコンドリア機能の指標である酸素消費速度(OCR)に基づき、イノシン酸が細胞機能に及ぼす影響を調べた結果、至適濃度はあるものの、イノシン酸を添加した場合のOCR値が対照よりも高くなる傾向であり、イノシン酸が筋管細胞のミトコンドリア機能を向上させることが示唆された。
  • マウスを1週間の予備飼育後、自発運動なしの群と自発運動ありの群に分類した。自発運動ありの群は、回転ホイールを設置した飼育ゲージで3週間運動を行った。その後、全群を回転ホイールのない飼育ゲージに移し、イノシン酸溶液または生理食塩水を腹腔内に投与(24時間ごとに3回実施)した。その後解剖を行い、足底筋のグリコーゲン量を測定したところ、イノシン酸を摂取し自発運動を行ったマウスの足底筋でのみグリコーゲンが有意に蓄積されることを確認した。

Development Stage & Future Research Plans

  • 上記のエビデンスに基づき、アスリートや一般成人のほか、高齢者や子供の持久力パフォーマンス向上を目指した商品化の可能性が考えられます。
  • また、妊娠期に適度な運動と共にイノシン酸を摂取することで、生まれてくる乳児にも好影響を与える可能性が考えられるため、本研究者は引き続き研究を継続しています。

Expectations

テックマネッジ株式会社では、福岡大学からの委託により、本発明技術のライセンス導入による製品化・実用化を検討していただける食品、飲料、サプリメント等のメーカーを探索しています。既に市販されている商品に対してもさらなる高付加価値化が可能だと考えられるため、今後の新製品開発に向けて本研究者と共同で研究いただけることを希望いたします。
本研究者と直接のご面談によるお打ち合わせや、福岡大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示も可能です。ご希望がございましたら何なりとご相談ください。

Publications

福岡大学 JST新技術説明会(2018年5月15日)
 *当日発表資料の提供が可能ですので、ご希望の方はお気軽にお問合せください。

Patents

特許第7022956号

Researchers

檜垣 靖樹 教授 (福岡大学 スポーツ科学部)

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