様々な脂質分子と結合する改変タンパク質や人工タンパク質を同様の手法で調製することが可能
Advantages
- PI(3,5)P2を特異的に認識し、かつ天然型よりも高い結合能を有する変異型SnxAタンパク質
- 抗体と比べて分子量も小さく、抗体ではアクセスできない箇所へのアプローチも可能
- 脂質結合プローブを用いた信頼性の高い脂質バイオセンサーの開発が期待される
Background and Technology
ホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)は細胞膜の微量成分であり、細胞内で重要なシグナル伝達分子として機能している。アルツハイマー病患者の脳ではPIPの減少が報告されているほか、膜輸送、炎症、細胞死といった多様な生物学的プロセスにも関与している。リン酸化修飾部位の違いにより、生体内には、PI、PI3P、 PI4P、 PI5P、 PI(3,4)P2、 PI(3,5)P2、 PI(4,5)P2、 PI(3,4,5)P3の8種類が存在し、それぞれが異なる機能を持ち特徴的な役割を果たしている。これらのPIPを解析するためには結合力が強く選択性の高い脂質プローブが必要だが、特にPI(3,5)P2など一部のPIPには適切な脂質プローブが存在しなかった。
そこで、本発明者らは、タマホコリカビの内在性(野生型)SnxAタンパク質に注目した。SnxAのPX domain領域はPI(3,5)P2と結合する脂質プローブとして知られているが、当該領域の配列を最適化することで、SnxAと同様にPI(3,5)P2に対する高い選択性を保持したまま、さらに強く結合する変異型タンパク質の開発に成功した。この最適化されたタンパク質は抗体に比べて分子量が十分非常に小さいことから、抗体ではアクセスが困難な組織内部位での使用が可能であり、これによりPI(3,5)P2の分布・動態解析や創薬研究のさらなる進展が期待され、今後、オルガネラ膜の解析やエクソソームの単離・解析、死細胞の検出、ELISAキットなどに利用できる信頼性の高い脂質バイオセンサーとしての利用が期待される。
Data
- 本発明の変異型SnxAタンパク質と、各PIPや他の酸性リン脂質との結合特性を調べたところ、野生型SnxAのPX domainと同様にPI(3,5)P2への結合特異性を維持し、他の脂質や酸性リン脂質とは結合しないことを確認した。
- 本変異型SnxAタンパク質を調製した方法を用い、他のPIPなど膜脂質特異的に結合するタンパク質も効率的に単離・調製することも可能である。
Development Stage & Future Research Plans
- PI(3,5)P2に特異的に結合し、天然型に対し結合能が大きく改善された変異型SnxAタンパク質をまず調製した。本手法により、今後、生体内で膜脂質と結合する他の可溶性タンパク質も順次調整予定。
Expectations
テックマネッジ株式会社では、大阪大学からの委託により、本変異型SnxAタンパク質を用いてPI(3,5)P2が結合する膜成分の単離・解析キット等の研究用試薬として製品化を検討していただける企業様や、その製品化上市までの期間において社内での研究開発に利用を希望される製薬・診断薬企業様を探しています。PI(3,5)P2特異的に結合する本変異型SnxAタンパク質以外にも、他のPIPや脂質特異的に結合するタンパク質を単離・調製できる可能性がありますので、本技術に関心をお持ちいただけるようでしたら、共同開発をご提案させていただきます。まずは研究者と直接のご面談によるお打ち合わせも可能ですので、ご希望がございましたら何なりとご相談ください。また、大阪大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示のほか、技術および発明の一定期間における有償評価(MTA契約/優先交渉権等のオプション設定)についてご検討いただくことも可能ですので、お気軽にお尋ねください。
Patents
特許出願中(未公開)
Publication
Taki NISHIMURA, et al., "Rational engineering of lipid-binding probes via high-throughput protein-lipid interaction screening." (bioRχiv's preprint, Jan 5, 2025)
Researchers
⻄村 多喜 教授 (大阪大学 蛋白質研究所)
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