自律的に形成される心臓などの器官原基を有するヒト胚モデル
Advantages
- シンプルな培地・工程であり、作製に特別な増殖因子や小分子化合物の添加が不要。
- 細胞が自律的に拍動する心臓をはじめとした器官原基や、神経管、腸管を製造することができる。
- 多様な臓器への分化が期待されるが、脳や卵黄嚢に相当する構造は認められない。
Background and Technology
ヒト胚に対する薬効や毒性試験には、マウスなどのモデル生物や、ES/iPS細胞などの培養細胞が用いられてきたが、これらの方法には限界があった。例えば、ヒトとマウスの初期発生には大きな違いが見られるため、マウスで得られた結果が必ずしもヒトに当てはまるとは限らない。また、二次元培養したヒトES/iPS細胞などの培養細胞を用いた手法は、複雑な生体組織を代替する方法としては不十分である。さらに、ヒトES/iPS細胞から臓器を作製して再生医療へと応用しようとする試みもあるが、複雑な臓器を試験管内で作り出すことはいまだ困難である。
本研究者は、ヒトiPS細胞を用いて、ヒトの初期発生を一部模倣することで心臓などの臓器の原器を含む人工胚モデルを開発することに成功した。具体的には、GSK3阻害剤で処理した原条様細胞とiPS細胞とを共培養させることで、それらが共凝集体を形成して増殖し、自律的に胚モデルが形成されることを見出した。得られた胚モデルは、製造工程において分化誘導剤を全く用いることなく、器官原基(心臓原基、腸管原基、神経管原基等)、臓器(血管等)、神経管、中胚葉等に分化することが確認された。
この人工ヒト胚モデルは極めてシンプルな工程・培地で種々の器官原基を自律的に形成することができるため、今後、初期胚を対象とした薬効・毒性試験での利用や、将来的には臓器移植のための臓器原基としての応用が期待される。また、多様な臓器への分化が期待される一方で、脳や中枢神経への分化は確認されず、倫理的な問題も生じにくいと考えられる。
Data
- GSK3阻害剤でヒトiPS細胞を1-3日間処理することで原条様の細胞を誘導したのち、それらを未分化のiPS細胞と共培養することでiPS細胞と原条様細胞が共凝集体を作り、増殖しながら伸長していくことを見出した。
- 培養3-4日目に共凝集体を振とう培養器に移して培養を継続すると、7日目ごろから拍動する心臓様構造(心臓原基)が認められた。また、神経管や消化管の分化も同時に確認された。胚の育成過程において、心臓は最も初期に作られる臓器であり、培養期間を延ばすことにより、他の臓器(肝臓、肺、腎臓など)の作製も可能である。
Future Research Plans
- 本研究で開発した人工胚モデルは、さらに遺伝子改変技術と組み合わせることで、先天性心疾患モデルの作製にも活用することができる。
- この人工胚モデルには、心臓に加え、腸管や神経管様の構造も確認されていることから、これらの臓器原器を取り出して成長させることが出来れば、臓器移植への応用も大いに期待できる。
Expectations
テックマネッジ株式会社では、熊本大学からの委託により、本発明のライセンス導入による以下のような製品化・実用化、または共同研究についてご検討をいただける企業様を探しています。
- 初期胚を対象にした薬効や毒性試験に用いるための、人工ヒト初期胚モデルとしての利用
- 臓器移植に使用する臓器原基の作製に向けた共同研究
本発明に関し、研究者らとの直接のご面談によるお打合せや、熊本大学との秘密保持契約の締結により未公開データ等の開示も可能ですので、ご希望等ございましたらお問い合わせください。
Patents
特許出願中(未公開)
Researchers
岡江 寛明 教授 (熊本大学 発生医学研究所)
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