抗体産生が困難な「抗原」に対しても認識し結合する抗体様のタンパク質
Advantages
- 哺乳類では抗体が産生できない致死性の毒素などを認識し結合する、哺乳類抗体と同程度の結合能を有するタンパク質が得られる
- 単一の遺伝子から合成されるため作成・単離が容易で、安価に大量合成が可能
- 研究用試薬のほか、毒素や病原菌類などの検査・検出試薬としての活用が可能
Background and Technology
現在、検査試薬に用いられる抗体は一般的にマウスなどの哺乳動物由来の抗体が広く用いられているが、作製には遺伝子工学的手法を伴うことに加え、大量調製や単離精製、あるいは一度作製した抗体の改良・改変には手間と時間がかかることから、一般にその検査試薬は高額となる。さらに、哺乳類に対して致死性を示す細菌やヘビ類の毒素などは、そもそも同様の手法では抗体を得ること自体が困難である。
近年、甲殻類において哺乳類の抗体と同様の働きを持つDscamタンパク質の存在が明らかになった。Dscamは動物では高度に保存されたタンパク質だが、その機能は動物毎に大きく異なっている。その中でも甲殻類においては抗体様の働きをすることが知られ、エビ類では特に抗原に対するDscamの結合部位の配列の多様性が非常に高いことが明らかになっている。
本発明者らは、クルマエビのDscamに着目し、コレラなどの哺乳類に対して致死性を示す細菌毒素や、あるいは危険度の高いウイルスを特異的に認識し結合するDscamの作製に成功した。さらに、それらの遺伝子を単離することで、哺乳類の抗体と同様に研究用ツールとして利活用が可能であることを実験的に確認した。
本発明のエビ由来Dscamは単一の遺伝子から合成されるタンパク質であることから、マウス抗体などと比較して作製・単離が容易であり、またそのために非常に安価に大量調製ができると考えられる。また、研究用試薬に限らず、病原菌類やヘビの毒素による死者の多い途上国における検査用途での実用化が期待されることから、その開発のためのグラント獲得を目指している。
Data
- ラッサウイルス糖たんぱく質、コレラ毒素、HIVウイルス由来タンパク質(HIV-1 p24)などをクルマエビに接種し、それら「抗原」を認識して結合するDscamを得た。また、それらの遺伝子の単離にも成功した。
- Direct-ELISAとして使えるDscamを得るため、Luciferase-fusionの形でリコンビナントDscam発現用ベクターを構築した。
- 抗原認識能の比較のために、HIV-1 p24に対する市販のマウス抗体と本発明で得られたHIV-1 p24に対するDscamとを比較したところ、同等の感度が得られることを確認した。
- 製品化に向け、各Dscamの解離定数などの基礎データを取得中。
Expectations
本発明のライセンス導入による、研究用試薬、検査試薬、およびそれらを用いた受託サービスなどの製品化・実用化をご検討いただける企業様を探しています。本発明/プロジェクトに関し、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能ですので、ご希望がございましたら何なりとご相談ください。
また、長崎大学との秘密保持契約の締結による未公開データ等の開示も可能ですので、お気軽にお尋ねください。
Publications
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論文投稿準備中
Patents
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Researchers
久保 嘉直 准教授 (長崎大学 熱帯医学研究所) ほか
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