光共振器による選択的化学反応

2023/12/15 15:15 By Tech Manage

特定の官能基の分子振動に対応する光子エネルギーを用いた有機合成

Advantages

  • 光共振器内の分子の狙った官能基の反応性を制御できる
  • 保護基や特定の触媒等を用いる必要がなく、反応時間やコストの削減が期待できる
  • 反応性の類似した官能基の場合でも選択的反応が可能であることを実験的に確認済みであり、様々な官能基への応用が期待できる

Background and Technology

反応リアクターとして「光共振器」を用いた、官能基選択的な有機合成手法の発明技術。光共振器とは、向かい合わせた一対のミラー等で構成される、特定の波長エネルギーを持つ光子を閉じ込めることが可能なデバイスのことであり、共振器内のミラー間の距離を2倍した長さが共振器内に存在する光子の波長の整数倍に一致するときに共振器内部の光電場が強め合う性質から、高強度の光でのみ起こる非線形光学効果などの用途で主に用いられている。
一般に有機分子は中赤外光を吸収することで振動状態が励起される。光共振器内に有機化合物が存在する場合、共振器内に閉じ込められた光子のエネルギーと共振器内の有機化合物のある特定の分子結合の振動励起のためのエネルギーとが一致すると、共振器と分子振動が光を介して強く相互作用し混成状態を作り、二つのエネルギー準位に分裂するラビ分裂が生じて振動強結合の状態へと至る。この光共振器内の現象を有機合成反応に応用すべく、反応リアクターを試作して実際に選択的な合成反応が進むことを確認した。

Current Stages

  • 図に示す構成の光共振器リアクターを試作した。また、反応中に生じる共振器内の溶液の屈折率の変化から得られる共振器モードの波数のずれを修正してミラー間の距離を自動制御できるようにし、振動強結合の状態を維持する自動制御機能を付与した。
  • 分子中にカルボニル基とアルデヒド基の両方を有する化合物(4-Acetylbenzaldehyde)を本発明の光共振器リアクター内で反応させた結果、ミラー間距離を調整することで、カルボニル基とアルデヒド基のそれぞれの反応選択性を制御できることを確認した(詳細は後述の論文を参照)。

Expectations

  • 原理的に、本発明を用いた選択的反応は他の官能基の場合にも応用できると考えられるため、他の有用な分子/官能基に対する本発明を用いた評価を一緒に行っていただける企業を探索中です。
  • 本発明で試作した振動強結合の状態を維持する光共振器自動制御システム装置、及びこれをフロー合成系に応用する開発を共同で行っていただける企業も探索中です。
  • 北海道大学との秘密保持契約の締結により、本発明関連の未公開データの開示や、研究者の考える今後の展開等の詳細開示が可能です。ご希望等ございましたら何なりとお尋ねください。

Publications

  1. Hirai K, et al., Angew. Chem. Int. Ed. (2020) 59, 5332–5335.
    DOI: 10.1002/anie.201915632

  2. Hirai K, et al., Chem. Eur. J. (2022) 28(47), e202201260.

    DOI: 10.1002/chem.202201260

Patents

国内出願済(特開2021-178311として公開済)

Researchers

平井 健二 准教授 (北海道大学 電子科学研究所)
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