鋼材内部の水素量の正確な測定方法

2023/12/05 11:38 By Tech Manage

試験鋼材サンプルの「外側」の環境中水素量を正確に同時測定することで、鋼材内部の水素量を測定できる

Advantages

  • 鋼材内部の水素量を、非破壊で正確かつリアルタイムに把握でき、水素脆化の対策に役立つ
  • 過度な水素脆化加速試験が不要になり、コスト削減に繋がる

Background and Technology

鋼材は、その内部に水素原子が取り込まれることで靭性が低下し、もろくなる水素脆化の問題が知られている。そのメカニズムはまだ完全には解明されていないが、機械的強度の高い高強度鋼や高張力鋼では特に水素脆化感受性が高いと言われており、さらに前触れもなく突然破断する「遅れ破壊」は鉄鋼メーカーや自動車メーカーにとって非常に大きな問題となっている。
水素脆化の対策として、まず鋼材に侵入する水素量を正確に把握することが重要であり、その主な方法として現在は昇温脱離法が採用されているが、操作中に鋼材試料内部から水素が抜けてしまい、リアルタイム性がないことが問題であった。そこで、本発明者は電気化学的に水素量を測定する方法とフロー型二重電極法(上流側電極で発生した反応生成物が、溶液フローにより押し流され下流側電極で検出される仕組み)を組み合わせることで、試験対象の鋼材内部の水素量リアルタイムに測定できる水素量測定手法(下概念図)を開発し、従来の問題を解決した。本発明の装置(試作機)では、鋼材試料に水素を侵入させた時に、侵入せずに逃げた水素と、試料に侵入してさらに透過した水素を同時に電気化学的に検出することによって、鋼材の内部に残った水素量を非破壊でリアルタイムに算出できることを確認した。

図:本技術の構成概念

Data

  • Devanathan-Stachurskiセル(DSセル)とフロー型二重電極法を組み合わせた装置を試作し、本発明の測定装置とした。
  • 鋼材試料内部の水素量は、侵入電流(侵入反応量に対応)の値、検出電流(非侵入反応量に対応)の値、及び引出電流(透過反応量に対応)の値から算出できることを確認した。

Expectations

テックマネッジ株式会社では、北海道大学からの委託により、本発明のライセンス導入による製品化・実用化をご検討いただける企業を探しています。装置メーカーのみならず、各種鋼材のユーザー企業での本発明の評価利用も可能です。また、本発明者とのご面談も可能であり、ご希望であれば北海道大学との秘密保持契約の締結による未公開データ等の開示も可能です。
また、本発明に関する共同研究のみならず、一定期間における独占的な評価検討や、実施許諾の優先交渉権等のオプション設定についてご検討いただくことも可能です。
ご希望等ございましたら何なりとお尋ねください。

Publications

  • 電気化学会  北海道支部50周年記念行事(2022年6月)
  • 日本鉄鋼協会  第184回秋季講演大会(2022年9月)
  • 腐食防食学会  第69回材料と環境討論会(2022年10月)  ほか

Patents

国内特許出願済み(未公開)

Researchers

伏見公志 先生 (北海道大学大学院 工学研究院 准教授)

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