電子のエネルギーを電磁波に変換する従来の発光素子とは全く異なり、
電子から高速に変換されるフォノン(結晶の格子振動)エネルギーを直接電磁波に変換
Advantages
- 量子カスケードレーザの、高温動作には波長変換等の工夫が必要、電子が光に変換される際にエネルギー損失が発生、との課題を解決
- 導体の被覆部間に露出する誘電体基板表面の短手寸法が2μm程度以下のシンプルな構造で、電流注入により露出部から縦光学(LO)フォノン共鳴光を放出可能
- 波長は物体固有でゆらぎは少なく材料の選択により可変。平均出力は数百mWを想定
- 黒体放射バックグラウンドノイズを大幅に低減、光への変換速度が高速、単一光子の放射が可能でスペクトル制御性が向上
Background and Technology
テラヘルツ波領域の電磁波は様々な応用が期待されている。例えば近距離の超大容量通信の実現や、非破壊・非接触による生体や化学素材の検査・分析、宇宙からの飛来信号の観測などである。しかし従来の量子カスケードレーザは原理的に、高温動作には波長変換等の工夫が必要、電子が光に変換される際に格子振動へのエネルギー流出が発生との課題を有していた。
本技術はこれらの課題を原理的に解決する、テラヘルツ波領域の半導体レーザ用発光素子である。電子のエネルギーを電磁波に変換する従来の発光素子とは全く異なり、電子から高速に変換されるフォノンエネルギーを直接電磁波に変換する。そのため高温で動作し、かつエネルギー使用効率が非常に高い。
図のように導体の被覆部間に露出する誘電体基板表面の短手寸法が2μm以下のシンプルな構造で、電流注入により露出部からLOフォノン共鳴光を放出可能である。波長は物体固有でゆらぎは少なく材料の選択により可変であり、平均出力は数~数百mW単位を想定している。また黒体放射バックグラウンドノイズを大幅に低減し、光への高速変換、単一光子の放射が可能となる。

Expectations
本件研究者はすでに各構成要素の原理検証を完了しており、試作機による実証を進めている。今後はグラントも獲得しながら企業との共同研究による実用化を目指しており、本技術を活用した全く新しい室温以上の高温動作が可能かつ高効率なテラヘルツ波半導体レーザの開発に関心のある企業(特に半導体レーザの製造技術を有する企業)を求めている。
Patents
PCT/JP2024/018344(出願中)
Researchers
石谷 善博 教授 (千葉大学 大学院工学研究院)
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