電流センサレス・周波数固定を実現するAC-DCコンバータ新制御

2025/11/04 15:32 - By Tech Manage

予測制御によりインダクタ電流センサが不要!全動作域でのZVSを達成

Advantages

全負荷域での高効率化
独自の予測制御により、軽負荷から全負荷まで理想的なゼロ電圧スイッチング(ZVS)を維持。電力変換損失を極限まで低減

部品コスト削減と小型化
インダクタ電流センサが不要なため、部品コストと実装面積を削減。周波数固定動作によりEMIフィルタなど受動部品の最適化・小型化も可能

高い設計自由度と信頼性
故障の原因となりうる物理的なセンサを排除し、システムの信頼性が向上。半導体デバイスの選択自由度も高まり、SiC/GaNの性能を最大限に引き出す

Background and Technology

AC-DCコンバータでは、電力変換効率と力率を改善するPFC(力率改善)回路が不可欠である。従来のPFC回路はダイオードブリッジでの導通損失が課題であったため、その対策としてブリッジレスPFCが開発されたが、これにはハードスイッチングによる大きなスイッチング損失という新たな課題がある。
このスイッチング損失を解決するZVS(ゼロ電圧スイッチング)技術として臨界モード制御が存在するが、「スイッチング周波数が変動しEMIフィルタが大型化する」「電流検知用のセンサが必須で、コストや信頼性に課題がある」といった問題があった。
本技術は、これらの課題を解決する、予測的なZVS制御方式である。インダクタ電流がゼロになった後、物理的なセンサで検知するのではなく、回路の状態から理論的に最適な休止期間を計算し、能動的に挿入する。この予測制御により、これまで必須であった電流センサを完全に不要とする「センサレス化」と、周波数変動問題の解決を両立。全動作領域で安定かつ高効率なZVS動作を可能にした。

Data

本技術の核心は、インダクタ電流(iLac)がゼロになった後、意図的に休止期間(共振期間 nT2)を設ける点にある。概念図(右図)が示すように、この期間中にデバイス電圧(Vsl)が共振によって自然にゼロに到達する。本技術はこのゼロになるタイミングをセンサを使わずに予測計算し、次のスイッチングをオンさせることで、理想的なZVSを達成する。休止期間(nT2)の長さを調整することで、スイッチング周波数を一定に保ったまま、出力電力を自在に制御できる。



Expectations

本技術は、サーバー電源、太陽光発電用パワーコンディショナ、EV用車載充電器(OBC)など、あらゆるAC-DCコンバータの性能を根底から引き上げるポテンシャルを秘めている。
核となる制御アルゴリズムは完成しており、この制御技術の実用化にむけて、半導体メーカー、制御ICメーカー様、各種電源メーカーなどと、製品への最適化を行う共同研究開発や、制御ICへの組み込みを想定した技術ライセンスなど、柔軟な連携を希望する。

Patents

特許出願中

Researchers

磯部 高範 (筑波大学 数理物質系 准教授)


Please click here to see English summary.

以下のフォームからお問い合わせください

Tech Manage