軽負荷時の騒音問題を解決し高効率を両立。EV車載充電器や半導体変圧器に最適
Advantages
全負荷域での高効率動作:
ゼロ負荷に至るまでZVS(ゼロ電圧スイッチング)を維持し、変換効率の低下を防ぐ。特に、従来制御ではハードスイッチングとなっていた軽負荷時において効率が向上
静粛性の実現:
スイッチング周波数を一定に保つため、従来のバーストモードで課題であった可聴域の騒音発生を回避。EV充電器やV2H機器に最適
システムの小型・軽量化:
スイッチング損失が低減されるため、より高いスイッチング周波数での設計が可能となり、トランスの小型化が可能
Background and Technology

EV車載充電器や半導体変圧器(SST)で中核となるDABコンバータは、ZVSによる高効率化が期待される一方、「軽負荷時にZVSが成立せずスイッチング損失が増加する」と、その対策である「間欠運転時の騒音発生」という二律背反の課題を抱えている。
本技術は、1スイッチングサイクル内に意図的に逆方向へ電力を送る「電力相殺期間」を導入する制御方式である。この期間中、送電側ブリッジの全スイッチをオフにすることで、インダクタと半導体スイッチの寄生容量との間で共振を発生させ、インダクタ電流の極性を反転させる。この電流反転によって一時的に逆方向の電力を生成し、順方向の電力を相殺する。これにより、ZVSの維持に必要な電流を常に流し続けながら、平均の伝送電力をゼロ近くまで自由に制御することを可能にした。
さらに、電力相殺時の不要な導通損失を最小化するため、ZVS達成に必要な電流値がより小さい「低圧側ブリッジ」のスイッチングを積極的に活用するアプローチにより、コンバータ全体の損失を抑制する。
Data
3.3kW級のDABコンバータ(高圧側3.3kV SiC-MOSFET使用)で実証
劇的な損失抑制効果:
従来SPS制御では損失が急増する1.3kW以下の軽負荷領域でも、本技術は損失の増加を抑制し、高効率を維持
損失最小化の鍵:
ZVSに必要な電流が小さい低圧側デバイス(0.24A)の特性を最大限に活用することで、電力相殺時の不要な損失を最小化(高圧側は0.75A)

Expectations
本技術は、EV用車載充電器(OBC)、V2G/V2Hシステム、半導体変圧器(SST)、データセンター用電源など、静粛性と軽負荷効率が同時に求められる最先端分野の製品性能を根底から引き上げるポテンシャルを秘めている。
基本原理は確立されており、今後は具体的な製品への実装を目指す段階である。企業の製品に本制御技術を適用するための最適化や、制御アルゴリズムを実装したICの共同開発、または本技術のライセンス契約など、関心のある企業様との連携を強く希望する。
Patents
特許出願中
Researchers
磯部 高範 (筑波大学 数理物質系 准教授)
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