合併症を起こしている患者にも投与可能
Advantages
- 関節炎モデルにおいて特異的に発現する転写因子FoxM1が、関節リウマチの病原性に深く関与していることを新たに発見
- 全身の免疫抑制を必要とせず、炎症滑膜に局在する病原性細胞の分化を抑制できるため、特に合併症を持つ患者にも適用可能
- 低分子化合物によるFoxM1阻害剤が、新たな分子標的治療薬としての可能性を有し、医薬品開発上の高いリターンが見込まれる
Background and Technology

現在、関節リウマチ(RA)の治療は早期介入によって重症化を防ぐことができるようになってきているが、既存の免疫抑制型治療薬は、感染症リスクや他疾患との併用制限といった臨床的な限界を有する。そのため、より選択的かつ副作用の少ない新規治療薬の開発が求められている。
本研究では、RA病態に関与する炎症滑膜特異的な破骨前駆細胞(R3)を同定し、その細胞群に高発現する転写因子FoxM1(Forkhead box M1)が、悪玉破骨細胞への分化を誘導する主要な因子であることを明らかにした。
さらに、低分子化合物(例:RCM-1)によるFoxM1の阻害によって、in vitroおよびin vivoの両レベルで破骨細胞分化と骨破壊の抑制効果を確認。ヒト関節リウマチ患者検体においても同様の効果が得られたことから、FoxM1はRAにおける骨侵食を制御する新たな分子標的であり、本因子をターゲットとした低分子薬剤は、既存治療に対する有効な補完手段となることが示唆される。
Data
- 関節リウマチ(RA)の病原性破骨細胞の分化を誘導する新たな因子FoxM1を同定。
- FoxM1阻害剤(例:RCM-1、チオストレプトン)が、RAモデルマウスおよびRA患者由来細胞に対して破骨細胞分化および骨破壊抑制効果を発揮

Expectations
- 本技術の大学側では、新規化合物(NCE)の合成や大規模ライブラリスクリーニングの予定はなし。そのため、FoxM1阻害剤の探索(スクリーニング)を起点とした製薬化を目指す共同研究を希望
- 開発の過程でNCEが見出された場合には、大学と企業での知的財産権共有を希望しつつ、出願済み特許と連動した独占的実施権の交渉が可能
Patents
特許第7535786号,PCT/JP2019/043057(WO2020/091052)
Researchers
石井 優(大阪大学・免疫学フロンティア研究センター・教授)
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