反応性スパッタ成膜のリアルタイム状態推定システム

2025/11/28 16:32 - By Tech Manage

Advantages

  • 不安定な反応性スパッタプロセスにおいて、プラズマ発光の全波長情報を機械学習することで、成膜された成果物中の価数状態・成長速度・格子定数を、リアルタイムで高精度に推定する技術。
  • 成膜プロセスを「見える化」し、複雑な反応性スパッタのプロセスをリアルタイムで理解・制御できる。
  • 開発時の「試行錯誤」をAI予測で代替し、開発期間を短縮。製造ラインの異常検知や大面積のムラ監視により、歩留まりを向上が期待される。
  • 他の酸化物や窒化物薄膜の製造にも応⽤でき、⾼品質なデバイス製造技術への展開も期待される。

Current Stage and Key Data

  • 鉄酸化物薄膜を反応性スパッタ法で成膜し、その最中にチャンバ内で発生するプラズマ発光を200nmから1000nmの広帯域で観測し得られたプラズマ発光(数百次元の波長データ)を主成分分析(PCA)した結果、わずか2つの主成分(PC1, PC2)だけで全情報の96.7%を集約できた。
  • 2つの主成分スコアのみで、鉄酸化物薄膜の価数状態(Fe₃O₄かγ-Fe₂O₃か)を正確に識別でき、さらに成膜速度も高い相関(R²=0.89)で予測した。
  • 鉄酸化物(Fe₃O₄, γ-Fe₂O₃)システムにおいて、本技術の有効性を実証済み。

Partnaring Model

筑波大学では、本発明のライセンス導入による製品化・実用化をご検討いただける、スパッタリング装置の開発・製造をしている企業様を探しています。また、筑波大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示のほか、貴社がお持ちの対象物に対する本技術の適用に関する共同研究も相談可能です。研究者との直接のご面談によるお打合せも可能です。

鉄酸化物以外のさまざまな酸化物や窒化物への適用を拡大できると期待されます。また、成果物の組成をリアルタイムに推定し、その結果を装置にフィードバックしてガス流量などを自動制御する「自律的な成膜プロセス制御システム」の構築も、期待されます。

Background and Technology

金属の酸化物や窒化物の薄膜は、電子デバイス、半導体、エネルギー材料(太陽電池、センサなど)に不可欠な材料である。その主要な製造方法である「反応性スパッタ法」は、成膜条件を同じに設定しても膜の組成や成長速度が変動しやすく、品質の再現性に課題があった。従来、新材料の開発や製造条件の最適化は、成膜後に分析・評価を行う「試行錯誤」に大きく依存しており、成膜中に「今、どのような品質の膜ができているか」をリアルタイムで正確に把握する有効な手段がなかった。
筑波大学の研究者らは、この課題に対し、反応性スパッタ中に生じるプラズマ発光スペクトルの全波長データを機械学習で解析し、生成する薄膜の価数状態と成長速度をリアルタイムに推定する方法を開発した。従来法が特定の波長の光だけを監視していたのに対し、本技術では、分光器で観測される「全波長のスペクトル情報」を機械学習(主成分分析, PCA)で統合的に解析する。この手法により、数百次元にも及ぶ複雑なスペクトル情報を、わずか2つの主要な特徴量(主成分)に集約(次元削減)することに成功した。鉄酸化物薄膜を用いた実証実験では、この2つの主成分スコアだけで、成膜中の薄膜の「価数状態」(化学状態の違い)、「成長速度」、さらには「格子定数」をリアルタイムで高精度に推定できることを実証した。本技術は、これまで困難であった成膜プロセスの「見える化」を実現し、製造プロセスの安定化と効率化、さらには製造現場での歩留まり向上やコスト削減が期待される。

Principal Investigator

柳原 英人 教授 (筑波大学 数理物質系 物理工学域)

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