耐震性能が低下しない振り子式制振装置

2025/04/23 12:53 - By Tech Manage

Advantages

  • 大きな振幅を持つ地震でも耐震性能が劣化しない、制振装置
  • 振り子の揺れる周期を磁石により制御。大振幅での非等時性を克服した
  • 振り子式制振装置の開発企業様、振動でお悩みの企業様との共同開発を希望しています

Background and Technology

地震などによる建物の揺れを抑えるための装置(制振装置)に、振り子を利用したものがある。この振り子式制振装置は、建物の揺れる周期(固有周期)と同等の周期で揺れる振り子を使い、建物の振動を吸収する仕組みである。
振り子式制振装置には大きく分けて、(1)制振対象の建物の振動方向と同じ方向に揺れるように振り子を設置する方法(この場合振り子の固有周期を建物のそれと一致させる:線形振動吸振器)と(2)建物の振動方向と直交する方向に揺れるように振り子を設置する方法(この場合振り子の固有周期を建物のそれの1/2に設定する:オートパラメトリック動吸振器)二つがある。従来は(1)の方法がよく使われていたが、建物と振り子が振り子の設置によって新たに発生する共振点で共振振動を起こしてしまう問題があった。一方、(2)は共振周波数付近の共振を効率的に吸収し、他の周波数では共振振動を起こさず、また、(2)では振り子の錘を小さくできるので製造・設置コストを抑えられるというメリットがある。しかし、振り子の揺幅が大きくなると効果が弱まるという問題があった。これは、振り子の非等時性によるもので、振幅が大きくなると振り子の周期が一定でなくなってしまい、共振の条件から外れてしまうためである。

そこで本研究者は、振り子が大きい周期で振れている時の非等時性を、磁石を使って補正し、制振装置の制振性能の低下を抑制する手法を考案した。具体的には、右図のように振り子を磁石にし、さらに振り子が揺れる両脇に磁石(主に電磁石)を設置する。そして、振り子の揺れの位相に合わせて両脇の磁石から発生する磁場を制御することで振り子にかかる力(反発力や吸引力)を制御することで、周波数を一定に保つ、つまり等時性を確保する技術である。

Data

  • 物理シミュレーションにより本技術の動作を確認した。本技術はオートパラメトリック励振に限らず、従来の線形振動吸振器でも動作することを確認済み。
  • 卓上サイズの制振装置を作製して実験したところ、振り子の振幅が大きくなっても周波数が維持されていることを確認した。

Expectations

筑波大学では本技術にご興味のある、以下のような企業様を探しています。

  • 振り子式制振装置を開発されている企業様
  • 建物や装置の「振動」でお悩み・お困りの企業様
共同開発を通して、一緒に開発を進めていただけることを希望しています。また、研究者との直接のご面談によるお打合や秘密保持契約締結による未公開データや発展技術の開示も可能ですので、お気軽にお問合せください。

Patents

特許 第7505824号、他に未公開特許出願あり。

Researchers

藪野 浩司 教授 (筑波大学 システム情報系)

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