Summary
- 時間分解能1ミクロン秒の超高速カメラ(イベントベースカメラ、EBC)を使用した、表面検査装置
- 対象物に多方向から光を照射して生じる輝度の変化をEBCが検出し、そのデータをソフトウェアで処理することで、表面のキズ・凹凸を検知する
- 高速検知:1つあたり20ミリ秒で検知。さらなる高速化もありうる
- 汎用性:金属や塗装面のような光沢のある対象物や透明物体も検査可能
- 低コスト:EBCと光源の消費電力や検知処理にかかる計算コストが低い
- 表面検査装置の開発や工場への導入に興味がある企業との協働を希望
Background and Technology
工業製品の外観検査では、目視検査やカメラを用いた自動検査が行われている。カメラを用いた自動検査ではヒューマンエラーを排除できるものの、光沢のある表面に適用しにくい問題、カメラのフレームレートの技術的上限から来る時間あたりの検査個数が限られる問題、さらに導入・運用コストの問題がある。
筑波大学の髙谷剛志 助教はこのたび、イベントベースカメラ(EBC)を用いた、超高速かつ低コストな表面検査装置を開発した。この装置は、右図のように、複数のLEDを配置した光源部と、EBCからなる。光源部のLEDは1個ずつ独立しており、発光するLEDを切り替えることで、検査対象物に対して異なる角度から光をあてることができる。
本技術が異常を検知する原理は以下の通り。
1. 光源部の一部のLEDが発光し、検査対象物を照らす(下左図)
2. 対象物の表面で光が反射する
3. 別のLEDが発光し、対象物を照らす(下右図)
4. 対象物の表面で光が反射する。しかし、もし表面に凹凸がある場合、反射のパターンが変わる
5. EBCは、下左図と右図で変化した反射のパターン、すなわち輝度の変化を検出する
6. EBCが検出した輝度変化のデータに、ソフトウェア的な偽検知防止処理などを施す
7. 輝度変化が異常によるものか否かをソフトウェアが判定する
Data
- EBC(時間分解能 1万 fps以上相当、Prophesee社製EVK4)を使い、独自開発の光源(白色LEDを60個搭載)や制御装置と組み合わせた検査装置を作製した。データ処理は一般的なスペックのラップトップ(Intel i5-1335U,メモリ16GB)を用いた。
- 凹みキズ(打痕、直径0.4mm程度)、線キズ(長さ5mm、幅 0.1 mm程度)、擦れキズ(幅0.1mm以下の線キズの集合)をつけたステンレス板とアクリル板(黒,透明)を被検査体とした。被検査体に向けてLEDを一つずつ順次発光し、EBCに反射光を入力した。すると、EBCには、各種キズに由来する輝度の変化が記録された。
- 光源の発光パターンは高速化することができる。現在、1周あたり18 ミリ秒で発光し、輝度変化をEBCで検知することに成功。今後さらなる高速化(1桁ミリ秒以下)を目指している。
Advantages
- 物品1個あたり、10ミリ秒レベルの非常に高速な検査を実現
- 表面に光沢がある物品の検査が可能。検査原理が輝度の変化の検知であることや、EBCのダイナミックレンジが非常に広いことによる。
- “こすれ”も検知画素スケール以下の異常も検査可能
- 計算・運用コストが安い。EBCは扱うデータ量が少ないため、検知処理にかかる計算コストが小さく、計算器の処理能力が低くて良い。小型コンピュータ(Raspberry Piなど)での動作も確認済み。
- ベルトコンベア上で移動する物品の検査にも適用可能。物品の位置情報を元に輝度変化を逆算することで異常検知できる。実証実験済み。
Expectations
- 本技術をライセンス導入し、表面検査装置を製品化・実用化される企業様や、工場への導入にご興味のある企業様を探しています。
- 本技術は非常に高速に処理できるため、生産ラインでの全数検査が現実的となり、製品の品質向上に寄与することが期待されます。
- このデバイスを製品化する際には、想定する測定対象に適したハードウェアと、検知したい異常に適したソフトウェアを開発する必要があります。
- 開発について、共同研究などを前提に、開発者との協業をご相談できます。具体的には以下の手順を提案します。
- 開発者との直接の面談による、技術内容の説明
- 貴社と筑波大学とで秘密保持契約を締結
- 貴社のニーズを詳しくお伺いし、具体的な協業を相談
- 共同研究契約を締結し、協業を開始
- 本技術の知財のライセンスを予約する「優先交渉権契約」も対応可能
- 事業化が見えた段階で、実施許諾契約(ライセンス契約)を締結。事業化スタート
Patents
特許出願中(未公開)
Researchers
髙谷 剛志 助教 (筑波大学 システム情報系)
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