異常状態の学習が不要な、異常信号の検知技術

2024/01/19 13:15 By Tech Manage

Advantages

  • 機械学習など従来の異常検知技術と大きく違う技術。異常状態のデータを学習する必要がない。正常動作時の情報だけをもとに異常検知が可能。
  • 隠れマルコフモデルを応用した新しいアルゴリズム。正常状態を学習したモデルを作れば、未知の時系列データに対し異常状態への遷移を判定できる。
  • ベルトコンベアの振動や橋梁の打音検査実験にて、実データを用いた有効性を確認済。
  • 工場等の機器やインフラに対する異常検知が容易となる。マーケティングオートメーションへの展開にも期待。

Background and Technology

ファクトリーオートメーションが進む中で、機器の異常を検出する技術は重要性が増しており、最近では機械学習を応用したシステムが有効とみられている。しかし、機械学習技術は一般に正常状態と異常状態の両方の学習が必要となり、その学習データの取得自体がコストである。さらには想定外の異常状態を検出することが難しいことも懸念され、さらなる技術レベルの向上が期待されている。
本技術は金融系などで用いられる技術「隠れマルコフモデル(HMM)」を応用し、機器の発するデータに現れる状態の正常と異常を判断する技術である。まず、事前準備として機器が正常に動作しているときのデータを使いHMMの学習を行い、「正常動作時モデル」を作る(図中①)。次に、業務中の機器のデータをモニタリングし、そのデータを使った学習を定期的に行い、「業務中モデル」を作る(図中②)。そして、これら正常動作時モデルと業務中モデルに含まれている状態遷移確率を比較する(図中③)。もしこの確率がほぼ同じなら業務中モデルは正常動作時モデルと同一と見なせ、つまり元になったデータを出力する機器は正常に動作していると捉えることができる。一方で、もし業務中モデルの状態遷移確率が正常動作時モデルと異なるなら、機器は異常状態にあると判断できる。本技術は手法としてはシンプルでありながらも、実は学習データの事前信号処理や正常状態と異常状態を正確に識別するアルゴリズムなど工夫が施された、優れた異常検知技術である。現在、ベルトコンベアが発する振動音や、模擬橋梁に対する打音検査時のデータを使った実験で正しく異常検知出来るという確認が得られています。
本技術により、工業設備や橋梁・道路などのインフラに対する異常検知が容易になり、点検コストの大幅な削減が期待できます。また、金融データ・マーケティングデータなども対象と考えられ、マーケティングオートメーションにおいても効果が期待できます。その他、ヘルスケアやスマートホームなどあらゆる場面で起こる異常検知にポテンシャルを持ちます。

Expectations

筑波大学では、本技術を用いた共同研究や特許ライセンスに関心を持つ企業を探索しています。本技術にご関心がありましたら、ぜひ弊社へお問い合わせください。

Publications

Patents

  • 特開2022-035161

Researchers

倉橋 節也(筑波大学 ビジネスサイエンス系 教授)

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