安価で高性能な表面起伏型光学ディフューザー

2023/02/07 16:53 By Tech Manage

~シンプルな設計で高透過率、広角拡散かつ低波長分散を実現~

Advantages

  • ナノ構造の回折広がりに基づき、90%の高透過率、広角拡散(半値幅で~83°)かつ低波長分散を実現
  • 複雑な分布関数を必要としないシンプルな表面ナノパターン設計で作製可能
  • 撥水性による自浄作用あり。また保護フィルムによる被膜が可能

Background and Technology

光学ディフューザーは、光を様々な方向に拡散するための部品であり、照明・液晶ディスプレイ・窓のような日常的な用途以外にも、レーザー光学、化学センサー、医療などで広く利用されている。光を拡散する手法は複数ある。例えば、シンプルな体積型(バルク型)は多重散乱により光を拡散するが、透過率が低い(50%未満)・拡散形状の自由度が低い(等方的に限定)との問題がある。一方、ホログラフィックディフューザーに代表される表面起伏型は高透過率(85%以上)で拡散形状が制御できるが、一般的に、光の屈折に起因する波長分散が生じる・拡散範囲が狭い(50度程度)・汚れや機械的衝撃に弱いという問題がある。
大阪大学の齋藤准教授らは近年、モルフォ蝶の光拡散特性に着想を得た新たな表面起伏型のディフューザーを開発し、85%の高透過率、広角拡散(半値幅が70度)かつ波長分散を抑制する(アクロマティックである)という優れた特性の両立に成功した(資料1参照)。しかし、この方法はガラスなどの表面に高さが異なり幅が数100ナノメートルの凹凸を作っており、狙った性能(透過性・拡散性)を持つ表面のナノパターンを設計することが難しいことや、その難しさから拡散角を制御しにくいこと、表面ナノパターンが汚れや機械的衝撃に弱いなどの課題を残していた。
齋藤教授らは今回、さらに技術を改良し、表面のナノパターンをシンプルに設計する手法を開発した。従来のように高さの異なる凹凸ではなく、高さが一定になる凹凸を使うことで設計による性能の制御をしやすくしている。また、ナノパターンを正方形や長方形の組み合わせにすることにより、拡散形状を円形や楕円型にしたり離心率を自由に設定することができ、光学素子としての使い方が増すと考えられる(図a)。数値的なシミュレーションでは、透過率90%でありながら、74度の円形拡散や、長径が74度・短径が16度の楕円型拡散といった異方性のある拡散が可能である。また、実際に、電子線リソグラフィとドライエッチングを用いてSiウエハ上にパターニングしたのち、PDMSにナノインプリントを施すことでディフューザーを作製し、想定通りの特性を得られている(図b)。加えて、表面ナノパターンがトータス効果による疎水性を持つことや、表面ナノパターンの上に保護層を設けることで拡散性能を保持したまま機械的衝撃から守ることができるなど、機能性の向上も期待される。

Expectations

大阪大学は、本技術を用いた光学ディフューザーの製品化にご関心を持つ企業様や、光学ディフューザーを照明や光デバイス、窓などの自社製品・事業に導入したいとお考えの企業様を募っております。開発者とのオンライン・オフラインでの打合せによる技術説明や、フィジビリティスタディのためのサンプル提供、共同研究などを通した製品開発、そしてライセンス契約による事業化、といった流れで、貴社に技術をお使いいただけます。

Publications

  • 資料1:今回ご紹介技術の2021年度時点の成果をOptics Express Vol. 29, Issue 19, pp. 30927-30936 (2021) にて報告しております。現時点ではさらに発展しており本記事記載のようなパターン構成になります。

    https://doi.org/10.1364/OE.436193

Patent

特許出願中

Researcher

大阪大学 工学研究科 准教授  齋藤 彰

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