超低消費電力で動く、無線式のIoTセンシングデバイス

2023/07/05 19:16 By Tech Manage

~高圧縮、高精度かつ高速な圧縮センシング技術とそれを支えるハードウェア技術~

Advantages

  • 環境発電(エネルギーハーベスティング)で駆動する、無線脳波計を開発中
  • <ソフトウェア>高精度で高速に圧縮・復元できる、圧縮センシングアルゴリズムを開発
  • <ハードウェア1>上記圧縮センシングを実現する独自回路・デバイスを構築
  • <ハードウェア2>極低消費電力な電源回路素子を開発
  • 脳波以外の生体信号(心電図等)のセンシングにおいても低消費電力化の可能性あり
  • 生体信号以外の温度、湿度、気圧、風速、電流・電圧、音声、映像なども対象になりうる

Background and Technology

昨今、IoT機器やウェアラブルデバイスに対するニーズが高まっており、脳波計は、一般に医療機関で使われており、大型かつ消費電力も大きい。一方、昨今のウェアラブルデバイスの普及により生体信号をモニタリングする需要が高まっているが、脳波ではそうした用途に適したデバイスがあまりない。こうした中、大阪大学大学院工学研究科の兼本准教授らはウェアラブル脳波計を独自開発している。ウェアラブル脳波計では、電極がついたヘッドギアとその脳波信号を処理する装置(コンピュータ)との間がワイヤレスであることが望ましい。つまり、ウェアラブル脳波計はバッテリーで動作することになり、デバイスの低消費電力化が求められる。そして大きな省電力化が期待できる手法のひとつが、扱うデータ・通信量を減らすデータ圧縮技術の採用だ。ただ、データ圧縮には、圧縮と復元にかかる時間や計算コスト vs 省電力化というジレンマや、省電力化のための高圧縮化が信号の質を低下するジレンマがあり、これらを両立するデータ圧縮技術は容易ではない。兼本先生らは、そうした制約条件のもとで効果的な、以下に示す技術を独自開発し、超低消費電力なウェアラブル脳波計を実現しつつある。
①ランダムアンダーサンプリングと独立成分分析を応用した信号処理アルゴリズム。ランダムアンダーサンプリングによる圧縮を行うことで、瞬きなどの外乱によって起こるノイズ(アーチファクト)を除去するために用いる独立成分分析を、ヘッドギア側でなく、信号処理コンピュータ側で行う(すなわちヘッドギアから送られた圧縮信号に独立成分分析を行う)技術を提案した。通常は、ヘッドギアで独立成分分析を実施したのち圧縮するため消費電力が高くなってしまうが、この問題を回避できる。(図1参照)
②復元精度の高い圧縮アルゴリズム。脳波のように信号がおおむね周期的という特性を利用して作った特殊な辞書行列とBSBLアルゴリズムによる圧縮センシング復元アルゴリズムを組み合わせることで、高圧縮かつ高速復元が可能な手法を開発した。さらに、本手法は従来利用されてきたDCT辞書を用いた場合に比べて著しく復元精度を高められることも実証済みである。(図2参照)
③独自開発のLDOレギュレータ。ウェアラブルデバイスでよく使われるLDOレギュレータを独自開発。低消費電力のまま、1 kHz以上の帯域でのPSRR(電源リップルを取り除く性能)を大きく向上した。以下の弊社Webサイトにて詳しく説明している。

また、これらの最新技術の一部を実機に採用することで、システム全体で約7割消費電力を削減した結果、兼本先生らの開発したウェアラブル脳波計のプロトタイプは、環境発電(エネルギーハーベスティング)で駆動可能なことを確認している。

Expectation

兼本先生が開発した技術は様々な信号センシングへの応用の可能性を秘めています。そこで、脳波センシングはもちろん、それ以外の生体信号やIoTデバイス・ウェアラブルデバイスの無線化、小型化、低消費電力化にお困りの方、無線通信のデータ圧縮技術にご関心をお持ちの方、エネルギーハーベスティングによるデバイス開発を期待されている方に対し、技術開発をお手伝いいたします。技術指導・共同研究・特許ライセンスなどのご契約を通して、大阪大学との協業体制をご提案できます。本技術を前提とする脳波計開発にもぜひご参加ください。

Publication

“Random Undersampling Wireless EEG Measurement Device Using a Small Teg、” in Proc。 International Symposium on Circuits and Systems (ISCAS) 2023年5月発表

Patent

特許出願中

Researchers

兼本 大輔(大阪大学 工学研究科 准教授)

以下のフォームからお問い合わせください

Tech Manage