分解能を二桁向上する、三次元形状の非破壊光計測技術

2022/12/20 16:11 By Tech Manage

Advantages

  • 光波散乱計測(scatterometry)の汎用性を向上する新技術
  • 半導体構造、微粒子形状、不純物付着検知、生体構造(細胞形状)、などの観察に応用可能
  • 可視光を用いて、数ミクロンサイズの血管の形状をサブミクロンの精度で測定できることを実証
  • 軟X線を用いて、セラミックス表面にある、数十ナノの微細構造形状を測定できることを実証
  • ワンショットで3次元形状を測定でき、非破壊的なハイスループット処理が可能。時間分解能は1ms以下が可能
  • 深い焦点深度で、振動の影響が小さい

Background and Technology

近年、半導体プロセスの微細化に伴い、その検査に必要とされる検出装置の精度はサブミクロン程度の非常に高いものが要求されている。また、半導体に限らず多くの分野で、異物や傷の検査は重要である。今回、そうした微小物の検出手法として、光散乱計測を提案する。光散乱計測とは一般に、物体表面で起こる反射光や散乱光を解析することで、その表面にある傷や付着した異物を検出する技術である。非破壊であることや、試料の事前加工などなしにその場観察できること、など利点が多数ある一方で、従来の光散乱計測では、光源の波長や強度の不安定性や、観察ターゲットの形状・大きさ・複素屈折率の揺らぎなどの影響により、ターゲットの形状を厳密に測定することには難しく、精密な計測が必要な昨今ではさらなる技術革新が求められる。

筑波大学数理物質系所属伊藤教授らの研究グループは、新たな光波散乱計測(scatterometry)の技術を開発した。
  • 非周期構造(孤立系)にRCWA(Rigorous Coupled-Wave Analysis)を適用し、孤立した微粒子や細胞等汎用的な試料の表面形状の計測を可能にする技術を開発。
  • 非周期構造の散乱パターンが、集光点と被対象物の位置関係によって大きく変化すること、及び、コントラストが最大になる位置は集光点が微粒子の直前にあるときであることを可視光で明らかにした。これにより、再現性良く孤立構造の散乱パターンを計測することを可能にした。
  • 高分子を観察する場合、内部構造により、コヒーレントな光がインコヒーレント(干渉性がなくなる)になってしまう。この際のRCWAの適用方法を開発し、光吸収性の膜に適用し実験結果を再現した。膜の内部構造が未知で、入射光のコヒーレンシーが大きく低下する場合にも、計算を可能にした。
  • 軟X線を孤立構造の透過光散乱計測に適用し、精度よく形状を求められることを実験的に示した。これにより、光散乱計測が軟X線でも有用であることを示し、原理的な分解能が可視光から一桁以上向上した。
  • 本技術による形状計測は1度の露光で可能なため、1ms以下の時間分解能で動画撮影できる。これは、半導体業界におけるインライン検査を可能にするだけではない。医学生物学分野では生体における物質の移動や細胞の形状変化の測定、工業ではインラインによる形状検査や材料表面構造の熱的な変化の測定など、マイクロ・ナノテクノロジー分野で広く応用が期待される。

Expectations

微小物質の検出や形状計測にお悩みの企業様へ。課題解決に向けた共同での装置開発をご提案します。
半導体メーカー様、半導体検査装置メーカー様へ。加工精度の向上や品質管理の簡略化に向け、本技術の導入をぜひご検討ください。
光学機器メーカー様へ。新たな光学計測技術として、製品化をぜひご検討ください。

いずれの企業様も、筑波大学との共同技術開発や、特許ライセンスによる事業化をご相談できます。ぜひお声がけください。

Publications

High accuracy cross-sectional shape analysis by coherent soft x-ray diffraction,
Applied Optics Vol. 59, 8661-8667 (2020)

Cross-sectional particle measurement in the resonance domain on the substrate through scatterometry, 
Opt. Express Vol. 25, 26329-26348 (2017)

Patents

特許第6783461号 他

Researchers

筑波大学 数理物質系 教授 伊藤 雅英
筑波大学 イノベイティブ計測技術開発研究センター 研究員 星野 鉄哉
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