ロバスト性が高く、設計・製造・設置・保守コストが削減できる、X線顕微鏡

2024/08/28 13:33 - By Tech Manage

Advantages

  • 新しいX線結像光学系の提案。KBミラー技術をさらに進めた高性能・低コスト。
  • 2つのミラーを一体にした「レンズ」を開発。X線透過像を高倍率で拡大する機能を発揮。
  • レンズの設置の精度が悪くても、光学系が吸収し、高い解像度を維持。
  • 振動や熱などによるズレも吸収するので、ランニングコストも低減。
  • 新しいX線顕微鏡製品として導入する企業を探索中。

Background and Technology

X線顕微鏡は、X線の高い透過性を活かしたイメージング装置として活用されている。代表的なX線の斜入射光学系として、Kirkpatrick-Baezミラー(KBミラー)が知られている。KBミラーは色収差を生じないが、コマ収差があるため、結像光学系としての利用が難しかった。名古屋大学工学研究科の松山智至教授は、KBミラーを改良してコマ収差を生じないようにした新しい光学系、Advanced KBミラー、を開発した(論文1、2参照)。これは4枚の凹面ミラーを組み合わせたもので、X線顕微鏡の対物レンズとして機能する。
このたび、松山教授は、さらに新しいX線の結像光学系を開発した(論文3参照)。この光学系は、X線における「凹レンズ」と「凸レンズ」からできている。松山教授は、双曲線でできた凸面ミラー2つをV字型に一体にした構造が、X線において凹レンズとして機能すること、そして、双曲線の凹面ミラーと楕円の凹面ミラーをV字型に一体化した構造が凸レンズとして機能することに着目した。これを下図のように組み合わせたものが今回提案する結像光学系である。本光学系は、KBミラーと同様に色収差がないだけでなく、Advanced KBミラーと同様にコマ収差も生じないため、X線顕微鏡の光学系として非常に適している。

本光学系の大きな特徴は、高いロバスト性とそこから来る低コスト化にある。X線光学系はミラーの配置(位置・角度)に非常にシビアであり、ナノ・マイクロメートルレベルのズレが解像度に影響する。しかし、本光学系では、上図の紙面に垂直な方向の回転のズレに対してロバストである。実際、回転ズレが数~数十マイクロメートル程度ある場合と正しい位置とでシミュレーションすると、点広がり関数(Point Spread Function)はほとんど同じだった。これまでのX線光学系はミラーをそれぞれ1枚ずつ配置していたが、本光学系は2枚のミラーが一体でレンズを構成するためにロバストになっている。つまり、X線顕微鏡の設計や製造段階で許容できるズレが大きいためにコストが削減できるだけでなく、据え付けや保守の段階においても振動や熱などの影響をうけにくいためにランニングコストも削減できる。

Expectations

松山先生は、本光学系を採用したX線顕微鏡を製品化する企業を探しています。ぜひ、貴社の次世代事業として導入をご検討ください。
以下のような段階を踏んで情報や知見を提供でき、貴社での本技術の導入の検討・事業化の支援をご相談できます。
  • ご質問への対応
  • 先生とのご面談による詳細説明
  • NDA締結下での情報交換
  • 共同研究
  • 特許ライセンス

Publications

Patents

Researchers

松山 智至 (名古屋大学 工学研究科 教授)


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