半導体バンドベンディングを精密に測定可能とするケルビンプローブフォース顕微鏡

2022/03/17 12:31 By Tech Manage

Advantages

  • 半導体バンドベンディングを精密に測定可能とするケルビンプローブフォース顕微鏡
  • マイクロ秒スケールで生じる電荷移動の影響をうけず、精密な表面電位測定が可能。
  • 時間分解能の向上により、1サンプルあたりの測定速度が向上。
  • 従来測定が不正確であった、半導体素子の動作周波数帯におけるバンドベンディングを精密に測定できる。実証実験済。

Background and Technology

 半導体のバンドギャップを測定することは、高性能、高効率、省エネルギーな半導体素子を設計開発する際に不可欠な工程である。
バンドギャップは半導体の表面電位から推定することができ、表面電位を測定する手法の一つがケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)である。

 KPFMは複雑な測定原理を持つことから、表面電位を測定する時間分解能がミリ秒からマイクロ秒が限界とされてきた。
しかし、現代の半導体素子はメガヘルツやギガヘルツで動作するために、既存のKPFM技術では、半導体の動作中に起こる現象を真に捉えているとはいいがたい。
例えば、KPFMで測定する際に、KPFMのプローブ(カンチレバー)と測定対象の表面との間に交流電位差を印可するが、その電位差の影響を受けて測定対象の表面と測定対象の深部との間で電荷の移動が発生し、「偽の表面電位」が現れる。その電荷移動の速度は一般にサブミリ秒未満(100 kHz)であり、これは従来のKPFMの時間分解能と同等である。
つまり、KPFMが「偽の表面電位」を測定してしまい、正しい表面電位を測定することができない。
これにより、半導体素子のヘテロ接合部などに存在するバンドベンディングの精密測定ができず、その結果として設計者や開発者は、狙った設計値を得られず、多数の試行錯誤を強いられてしまう。

 KPFMの時間分解能を向上できない原因は、表面電位がプローブに与える影響が非常に微弱なことにある。
KPFMの時間分解能は、プローブと測定対象との間に印可する表面電位差検出用の交流信号周波数 f によって決まる。
しかし、この表面電位差検出信号の周波数 f を高くし、プローブの振動周波数 f_0 に近づくと、表面電位に由来する信号 Δf が、急激に減少してしまう。
つまり、表面電位に由来する信号を読み出すことができなくなるため、周波数 f を高くすることができないとされてきた。

 大阪大学工学研究科の菅原康弘教授(Prof. Yasuhiro SUGAWARA)は、KPFMの検出原理を改善することで、前述した問題を解決した。
それは、表面電位差検出用の交流信号周波数 f を、カンチレバーの駆動周波数 f_0 の定数倍とする、つまりf = 2 * f_0 とすることである。
表面電位差由来の信号 Δf は信号 f の近傍の周波数に現れるが、本発明の場合信号 f はカンチレバーの振動周波数 f_0 から離れた帯域 f = 2 * f_0 にあるため、従来のKPFMで発生していた信号 Δf の急激な減少が発生しない。
菅原教授の提案する新技術により、十分な強度を持つ Δf を検波できるため、表面電位の情報を高いSN比で取得できる。

Application

 詳しい動作原理については、以下を参照してください。

・半導体の表面電位測定、特にバンドベンディング測定に最適である。
菅原先生による実証例は次の論文に記載。

・FM型、AM型いずれのKPFMでも採用できる。

・KPFMの測定時間分解能を向上する。金属、半導体、絶縁体といった素材の表面電位を従来の時間分解能(ミリ秒~マイクロ秒)より高速で測定する。高周波数動作が標準となった現代における最先端表面物理の研究・開発に貢献する。

・KPFMの測定速度を向上する。

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