Advantages
- MRI/NMRの感度を飛躍的に向上させる、核スピンを高効率に偏極する新技術。
- 室温・低磁場で、通常のNMRに比べて、1万倍の高感度を実現。
- 超高感度な化学分析や生体内の代謝イメージングが可能に。
応用:創薬での低濃度分子スクリーニング、超早期や深部など難検知がんの発見、がん治療効果の早期可視化 - MRI/NMR装置メーカー様、医療機器・科学計測機器メーカー様、製薬関連会社様へ。開発プロジェクトへの参加をぜひご検討ください
Background and Technology
MRIやNMRは、生体や化合物の構造・代謝を非侵襲的に可視化できる技術であるが、その感度は核スピンの自然偏極率の低さにより制限されている。そのため、生体内の微細な代謝変化のリアルタイム追跡や微量試料の精密分析が困難であった。この課題を解決する方法として動的核偏極(DNP)技術が開発されたが、核スピンを高偏極化するためには、極低温(1.5 K)や非常に強い磁場(5 T)を必要とし、装置が大掛かりかつ高額であった。加えて、DNP技術による偏極状態の寿命は約1分程度と短く、応用範囲が制限されていた 。
大阪大学の根耒誠教授らは、この課題を解決する新技術「トリプレットDNP法」を開発した。本法は、レーザー励起により三重項状態にしたペンタセン分子を偏極源とし、マイクロ波照射と磁場掃引を組み合わせることで核スピンを偏極する。この技術は高効率に偏極できることから、通常のNMRにくらべて信号強度が1万倍も強くなった。それだけでなく、偏極の寿命が長い(10分以上)、室温かつ低磁場(0.4 T電磁石)で実行できるという実用面の大きな利点がある。
本技術により、超高感度な化学分析や代謝イメージングが可能となる。創薬分野での低濃度分子スクリーニング、深部にあるがんや超早期のがんを発見すること、がん治療効果の早期可視化など、創薬や臨床においてこれまでにない知見を得られるだろう。また、装置は低コスト・省エネかつ小型(1.2m³に収まる)であり、既存のMRI室にそのまま設置することができる。

Data
室温で動作する、0.4テスラの電磁石を使った偏極を付与する装置を開発した。p-ターフェニルの単結晶をこの装置にかけ、トリプレットDNP法によって高偏極化した。この装置が出すマイクロ波と磁場によって同結晶にドープされた微量のペンタセンが、電子スピン三重項状態になったのち、p-ターフェニルの核スピンを偏極した。この偏極率は34%と並外れて高い偏極率であり、その結果、本技術の信号強度は、通常のNMR分光(10テスラ、室温)に比べて1万倍にまで増強していた。
本技術を、in vivoへ適用する開発を進めている。高偏極したプローブ分子を溶解する技術を開発し投与可能にする他、実際にマウスでのMRI信号検出に成功している。
Expectations
大阪大学では、本技術をもとにした技術開発プロジェクトを進めています。MRIやNMR装置メーカー様、医療機器メーカーや科学計測装置のメーカー様にぜひ参加いただけますと幸いです。
また、製薬企業様や製薬関連の企業様でのご利用相談もお受けします。本技術は薬物動態や標的分子探索において、非放射性かつ高感度で短時間に行える新規スクリーニング技術です。パイプラインの初期評価、毒性試験前の選別効率化に貢献します。
研究者との面談などを通してプロジェクトを理解いただき、ご参加を相談いたします。お気軽にお問い合わせください。
Patents
特許6789585他多数
Researchers
根耒 誠 教授 (大阪大学 量子情報・量子生命研究センター) ほか
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