スルファモイル基とカルボキシル基をもつ新規のメタロ-β-ラクタマーゼ阻害剤
Advantages
- NDM-1、IMP-1およびVIM-2を含む主要なメタロ-β-ラクタマーゼに対する阻害効果
- スクリーニングとβ-ラクタマーゼ結合解析によりデザイン・最適化された新規化合物
- 低い細胞毒性とマウス急性毒性を示し、マウス感染実験で有効性を確認
Background and Technology
近年、β-ラクタム系抗生物質に対し耐性を獲得した各種の病原菌による感染症の報告が増加しており、その治療困難性が問題となっている。主たる耐性メカニズムは、β-ラクタム系抗生物質を分解・失活させるβ-ラクタマーゼの産生である。メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)は活性中心に亜鉛を含む金属酵素であり、活性中心にセリン残基を有するセリン型β-ラクタマーゼとは、その性質が全く異なる。
MBLは広い基質特異性を示し、その産生菌は多くのβ-ラクタム系抗生物質に耐性であることから、臨床現場で脅威となっている。例えば、MBLはセリン型β-ラクタマーゼに対して安定であるカルバペネム系抗生物質をも分解してしまう。また、MBLを産生する株は多くのグラム陰性桿菌で確認されており、特に、腸内細菌目細菌や緑膿菌のMBL産生による多剤耐性化とその蔓延は国際的に問題視されている。現在、臨床で使用されるβ-ラクタマーゼ阻害剤は、セリン型β-ラクタマーゼの阻害に有効なクラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、アビバクタム等であり、MBLに対して有効な阻害剤は、未だ実用化に至っていない。
私たちは、大学所有の2万以上の化合物ライブラリからMBL(NDM-1・IMP-1・VIM-2)を阻害する化合物をスクリーニングし、さらに結合構造解析を行い、スルファモイル基とカルボキシル基をもつことを特徴とする新規な阻害剤を設計・合成した。
Expectations
- 本阻害剤候補の一つ(X2d)が、MBLであるIMP-1・NDM-1・VIM-2を発現する大腸菌のメロペネム(カルバペネム系抗生物質)およびセフタジジムに対する感受性を著しく向上させ(上図)、NDM-1とVIM-2を同時に産生する肺炎桿菌(臨床分離株)感染マウス(n=5)に本阻害剤をメロペネムと同時に腹腔投与したところ生存率が改善された(下図)。
- ヒト培養細胞に対する細胞毒性およびマウス急性毒性試験で有害事象がないことを確認済。
- 臨床開発を目指して協働するパートナー企業を募集中。
Publication
Patent
- 公開特許出願:WO2019/221122
Researcher
荒川 宜親 (名古屋大学大学院医学系研究科)
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