代謝活性化状態や老化度の指標となるバイオマーカー

2025/08/29 17:23 - By Tech Manage

機能性食品の効果や未病状態を評価するスクリーニングへ適用可能

Advantages

  • 抗老化化合物による誘導: メトフォルミン、レスベラトロール、硫化水素(H₂S)といった抗老化作用を持つ刺激に応答し、CtBP2のエクソソーム分泌がin vitroで誘導されることが確認されている。
  • 健康長寿・老化との相関: 長寿家系の血縁者で血中CtBP2濃度が有意に高い一方、加齢に伴いその濃度は有意に低下することから、健康長寿や老化の度合いを直接反映する代謝マーカーである可能性が示される。
  • 生活習慣との相関(喫煙): 喫煙者、特に男性において、血中CtBP2濃度が非喫煙者と比較して有意に低いことが確認されている。

Background and Technology

CtBP2(C-terminal Binding Protein 2)は、細胞内のNADHや脂肪酸CoAといった代謝物を感知し、転写因子と相互作用することで代謝関連遺伝子の発現を調節する、代謝センサー分子である。CtBP2は、細胞のエネルギー状態を反映するNADHと会合している際には二量体を形成し、転写抑制因子として機能する。しかし、肥満時などに過剰な脂肪酸CoAがCtBP2に結合すると、この二量体構造が崩れて機能不全に陥る。その結果、メタボリックシンドロームに関与する遺伝子群の抑制が解除され、代謝制御の破綻を招くと報告されている。
今回発明者らは、CtBP2はメトフォルミンやレスベラトロールといった加齢に関連する代謝物の刺激により二量体型となり、血中に分泌されることを発見した。さらに、ヒト血中のCtBP2濃度を測定した結果、長寿家系では血中CtBP2濃度が有意に高く、年齢とともに緩やかに低下することを見出した。また、喫煙者の血中CtBP2濃度は非喫煙者と比較して低い傾向にあることも確認された。CtBP2をエクソソームに包含しマウスへ投与したところ、寿命延長効果が確認されたことから、CtBP2は加齢の指標となる代謝の健康状態を反映するバイオマーカーとしての利用が期待される。

Data

  • 抗老化作用をもつ化合物(メトフォルミン、レスベラトロールなど)を細胞に処理した結果、 CtBP2含有エクソソーム分泌量が増加した。
  • 30歳から69歳のヒト血清中のCtBP2濃度を測定した結果、 長寿家系で高値を示した(A,B)
  • 喫煙習慣と血中CtBP2濃度の関連を調べたところ、喫煙歴に応じてCtBP2濃度が段階的に低下していた(C)。

Expectations

筑波大学では、血中CtBP2濃度を指標とする、抗老化や代謝活性化をコンセプトとした健康食品や機能性表示食品の開発に取り組む企業との共同研究を期待します。具体的には、本マーカーを客観的な評価指標として製品開発に応用し、新規素材のスクリーニングや製品の機能性評価を共同で実施することに関心があります。秘密保持契約(NDA)締結による詳細な未公開データの開示や、発明者との直接面談を通じた具体的な協業計画の協議も可能です。

Publication

Researchers

関谷 元博 准教授 (筑波大学 医学医療系) ほか


Please click here to see English summary.

以下のフォームからお問い合わせください

Tech Manage