APTES修飾に代わるシンプルなガラス基板処理法:TiO₂層を介した均一な金コロイド吸着技術
Advantages
- 新しいガラス基板処理技術の導入:APTES修飾ガラスに代わり、TiO₂層を使用 することで、等電点の調整が容易になり、金コロイド結晶を規則的かつ緻密に配列できる吸着技術を実現。
- 超高感度SPRセンサーの開発:MIM構造(Au-絶縁体-Au) を活用し、金薄膜コーティング基板上に金コロイド結晶を固定。その結果、従来のSPRセンサーと比較して 約2倍の感度向上 を達成。
- 応用分野と期待:創薬、バイオマーカー検出、ウイルス診断、食品安全検査 など、多様な分野で高感度なバイオセンサーとしての応用が期待される。

Background and Technology
金粒子が規則的に配列したコロイド結晶は、プラスモニック材料として優れた特性を持ち、分析・測定用のSPR基板としての応用が期待されている。通常、コロイド結晶をガラス基板に吸着させるには、ガラス表面をAPTES(アミノプロピルトリエトキシシラン)で処理して正に帯電させたうえで、負に帯電したコロイド結晶溶液を滴下する。この過程では、pHを等電点(pH8)以上に調整する必要があり、そのために高濃度のアルカリ(NaOH)の添加が必要となる。しかし、アルカリ添加により塩濃度が上昇すると、コロイド結晶の構造が不安定になり、均一な結晶構造を維持したまま吸着させることが困難になる課題があった。
発明者らは高い等電点が問題となるAPTES修飾ガラスに代わる新たな基板処理法として、等電点が低いチタニア(TiO2)などの金属酸化物でコートすることで、アルカリの添加量を削減することを着想した。具体的には、ディップコート法を用いてガラス基板上にTiO2の薄膜を形成し、その上に金コロイド結晶を吸着させた。その結果、NaOHの添加量はAPTES処理時と比較して1/6以下に抑えられ、従来のAPTES修飾ガラスと比べて、より均一で緻密に配列した金コロイド結晶が吸着した基板を作製することに成功した。さらに、金薄膜でコーティングしたガラス基板上に固定することで、MIM構造 を持つSPR基板を作製したところ、より高感度な検出が可能であることが示された。
Data
- APTES処理ガラス:NaOH添加量は625μM、金コロイド構造が乱れて吸着していた。TiO2ディップコートガラス:NaOHを添加量は100μM以下、結晶が緻密に配列することを確認した。
- 絶縁層を介して金コロイド結晶を金薄膜上に固定したMIM構造(b)、LSPR(localized SPR)に比べてMIM構造がFano共鳴により複数のプラズモンピークを生じ、高感度センシングを可能にする(C)。
- 粒径約200 nmの金コロイドを用いた基板におけるエチレングリコール (EG) 濃度変化に対する反射スペクトルの変化、(d) は金コロイド/ガラス基板、(e) はMIM基板の結果を表す。(f) は、屈折率変化に対するプラズモンピークシフトを示し、MIM基板の方が約2倍の感度を持つことが確認された。

Expectations
本技術を用いてガラス基板を評価し、製品化に向けて共同で開発を進めていただける企業様を探しています。本発明に関し、名古屋市立大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示のほか、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能ですので、ご希望がございましたらお気軽にご相談ください。
Patents
JP7253169B2、WO2024181497
Researchers
山中 淳平 先生、豊玉 彰子 先生
(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
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