既存の血液マーカーでは陰性となる関節リウマチ患者の検出や早期診断が可能
Advantages
- 高感度・高特異度:既存のACPAやRF陰性の関節リウマチ患者でも検出されていることから、より多くのRA患者を正確に診断できることが示唆されている。
- 早期診断の可能性:RAの早期段階での診断が可能となり、早期の治療介入につながることが期待される。
- 疾患活動性のモニタリングや治療効果の評価:治療の効果の経時的な評価が可能となることが期待される。
Background and Technology
関節リウマチ(RA)は、関節の腫脹や痛み、さらには関節の変形や破壊へと進行する炎症性自己免疫疾患である。RAの診断は、関節の腫れや痛み等の症状や、血液検査値などの総合的な評価によってなされている。RA患者の体内にはシトルリン化ペプチドに対する抗シトルリン化タンパク質抗体(ACPA)が存在することが知られている。環状シトルリン化ペプチド(CCP)によって検出されるACPAは、RAの診断において重要な役割を果たしているが、すべての患者が陽性となるわけではない。また、ACPAでは早期診断や治療効果のモニタリングが難しいという問題がある。
発明者らは独自に開発したRAマウスモデル(pGPI誘導性関節炎マウス)およびヒトRA患者の血清のシトルリン化タンパク質を分析した結果、両者の血清においてITIH4(Inter α trypsin inhibitor heavy chain4)の438番目のアルギニン残基がシトルリン化されていることが共通して見出された。このシトルリン化ITIH4(cit-ITIH4)は、健常者やSLEなどの他の自己免疫疾患では検出されず、RA患者に特異的に検出され、さらに疾患活動性と相関することが確認された。このcit-ITIH4はRA滑液中により多く存在し、関節炎を反映し血中に漏れ出す形で陽性となることも明らかにした。また、ACPA陰性、RF陰性の患者の8例中7例においてもcit-ITIH4が検出されたことから、既存の血清学的検査で診断できなかった患者も正確に診断が可能になることが期待される。現在、免疫沈降法でcit-ITIH4の同定は可能であるが、cit-ITIH4特異的な抗体を開発し、より簡便なELISA法などによるcit-ITIH4の検出による新しいRAの診断技術の開発を目指している。
Data
- RA患者における血清cit-ITIH4とRF/ACPAとの関係(表)。RA患者(n = 17)におけるcit-ITIH4レベルと疾患活動性の指標であるDAS28-CRPとの相関(A)。生物学的製剤(1-2:アバタセプト、3-8:インフリキシマブ)投与前および24週後のRA患者の血清サンプルにおけるウェスタンブロット分析(B)。治療前後のcit-ITIH4レベルとDAS28-CRPの差との相関(C)。

Expectations
Current Stage:抗ITIH4抗体, 抗cit(R438)-ITIH4抗体を樹立しており、ELISA系の構築を試みている。
企業への期待:診断薬の開発企業様との共同研究と特許のライセンスアウトを希望します。共同でELISA系を構築していただける企業様との協業にとどまらず、質量分析など企業独自の技術や検出系による診断薬開発についても関心があります。
Publications
Patents
成立済み: JP7202010B2, US11774447B2
Researchers
松本 功 先生 (筑波大学・医学医療系・膠原病リウマチアレルギー内科学)
以下のフォームからお問い合わせください