生体腸管に近い凹凸構造を持つCaco-2細胞評価系

2024/12/18 14:50 - By Tech Manage

生体腸管に近い構造と遺伝子発現を持つCaco-2細胞レイヤーを機械的刺激なしで誘導する

Advantages

  • 安価で安定した供給:標準的なモデル細胞であるCaco-2細胞を使用しており、安価で安定した供給が期待される
  • 簡便な凹凸構造の誘導:気液培養とサプリメントの組み合わせだけで凹凸構造を誘導することが可能
  • 代謝酵素の発現改善:従来のCaco-2細胞では発現が低かったMUC2やCYP3A4などの代謝酵素の発現量やパターンが改善した

Background and Technology

薬物動態の研究において腸管モデルは重要なツールとして広く利用されている。その中でも、凹凸状の立体構造を持つ腸管細胞の評価系は、ヒト生体系に近い評価を行うことができると期待されている。発明者らは、ヒトiPS細胞由来の腸管オルガノイドから陰窩絨毛様の凹凸構造をもつヒト腸管細胞(hIC)の培養に成功したが、コストの高さや均一な品質で大量に供給することが難しいなどの課題がある。
ヒト結腸がん由来のCaco-2細胞は、安価で安定した供給が可能な標準的なモデル細胞として、膨大なデータが蓄積されている。機械的な負荷を加えた培養等によって凹凸構造を形成させる報告はあるものの、通常の培養によって凹凸構造を形成させた例は知られていない。
発明者らは、これまでの腸管オルガノイドの誘導培養研究で得られた、Medium5(M5)培地や気液培養の知見をCaco‐2細胞の培養系に応用し、Caco-2細胞を用いて生体腸管に近い凹凸構造を持つ細胞に誘導することに成功した。凹凸構造の形成に必要な培養因子を同定し、それらを含むM5培地で気相液相界面培養することで凹凸構造を形成させ、単層のCaco-2レイヤーに比べて生体腸管に近いTEER値を示すことを確認した。さらに、Caco-2細胞で課題となっていたMUC2や代謝酵素であるCYP3A4の発現量、カルボキシルエステラーゼCES1/CES2比の発現パターンが変化し、生体腸管に近づくことも確認された。本発明により、ヒトの生体系に近い凹凸立体腸管評価系モデルとして安定で安価な供給につながることが期待される。

Data

  • Caco-2細胞をセルカルチャーインサートに播種し、培地としてCaco-2培地またはサプリメントを添加したM5培地を用いて、気相液相界面培養(ALI)または通常の液相培養(LL)で15日間培養時の、細胞の状態(右図)TEER値(A)ALI培養をした時のCYP3A4遺伝子の発現と小腸細胞との比較(B)

Expectations

本発明のライセンスを受けて三次元培養試験系の製品化に取り組む細胞製品の開発企業を探しています。サプリメントの組成を含む詳細な培養方法については秘密保持契約下での開示が可能です。本発明/プロジェクトに関し、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能です。

Patents

特許出願中(未公開)

Researchers

松永 民秀 先生(名古屋市立大学 大学院薬学研究科)


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