初代肝細胞を接着型細胞に誘導する方法

2024/08/15 10:35 - By Tech Manage

細胞外マトリックス(ECM)とサプリメントの組み合わせによって安価な浮遊型の初代肝細胞から有用性が高い接着型初代肝細胞を得ることができる

Advantages

  • 得られた接着型肝細胞の酵素実験、継代培養、スフェロイド培養、凍結保存が可能
  • 安価な浮遊型細胞の高付加価値化につながり、用途も大きく広がる
  • 1か月の長期培養も可能で、慢性毒性試験など長期培養が必要な研究への応用も期待される

Background and Technology

ヒト肝初代培養細胞は薬剤の評価試験に一般的に用いられる細胞製品であり、プレートに接着する接着型(Plateable)細胞と接着できずに浮遊する浮遊型(Suspension)細胞がある。どちらも生体肝から得られるが、細胞を播種後に接着状況を確認するまでどちらになるかは分からず、またその理由も十分明らかになっていない。
接着型細胞は数日間の培養が可能で、細胞間の相互作用や薬物代謝酵素cytochrome P450(CYP)の誘導実験、セルカルチャーインサートを用いた薬剤輸送性の評価などにも用いることができることから汎用性が高い。一方、浮遊型細胞はCYPの誘導実験やセルカルチャーインサートの試験に用いることはできず、数時間で死滅して長期の培養ができないなど、制限が多く、使い勝手が悪い。接着型細胞は浮遊型細胞に比べて高値であるため、浮遊型を接着型細胞に変換できれば、割安な浮遊型細胞の用途が広がることが期待される。
発明者らはこれまでの幹細胞培養や分化誘導の知見を基に、浮遊型細胞をECMコートしたプレートで培養し、成長因子などのサプリメントを工夫して培養したところ、プレートに接着できる細胞になることを見出した。本発明を用いて誘導された接着型細胞は酵素誘導実験に用いることが可能であり、継代培養、スフェロイド培養、また凍結保存もできることが確認された。さらに、約1か月の長期培養が可能であり、薬物代謝酵素の誘導試験での利用や長期培養が必要な薬物性肝障害等、慢性毒性試験に関する研究などへの応用が期待される。

Data

  • 浮遊型ヒト初代肝細胞をECM処理プレートに播種し、成長因子や生理活性物質を含む培養液①で培養し、培養液②(培養液①+各種阻害剤を含むサプリメント)で培養したところ接着型の初代肝細胞と同様の形態を示した。凍結保存も可能であることを確認した。
  • その後、成熟用培地③で培養後、Rifampicin(RIF)、Phenobarbital(PB)及びOmeprazole(OME)の添加によるCYP3A4、CYP2B6及びCYP1A2の発現誘導をそれぞれ確認した。

  • 誘導した接着型細胞を培地②を用いて3次元で培養した結果、スフェロイドの誘導に成功し(右下図)その後のセルカルチャーインサートへの2次元展開培養も可能であった。

Expectations

本発明のライセンス導入による初代肝細胞製品の製品化・実用化をご検討いただける研究用の細胞製品の開発企業様を探しています。研究者との直接のご面談によるお打合せや名古屋市立大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示も可能です。

Patents

特許出願中(未公開)

Researchers

松永 民秀 教授(名古屋市立大学 薬学部薬学研究科)


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