可視光・常温で二酸化炭素からエチレン、プロピレン、エタン、プロパンを生成する光触媒

2024/09/03 15:42 - By Tech Manage

加熱不要な人工光合成

Advantages

  • 比較的安価な触媒材料を用いる。
  • UV-可視光照射のみで反応が進み、加熱等のエネルギー付加は不要。
  • H2の代わりに、反応系中のH2Oも還元剤となることが実証済みで、人工光合成の反応が進む。

Background and Technology

カーボンニュートラルサイクルを構築する方策の一つとして、二酸化炭素を還元する触媒が開発されている。これまでの報告では一酸化炭素(CO)やメタンを得る光触媒は知られている。しかし、炭化水素として付加価値の高いエチレンやプロピレンを得る報告はほとんどない。また、二酸化炭素の還元反応において、コストの高い水素を反応系に添加することが必要であることも課題である。
発明者らはコバルト粒子を担持した酸化ジルコニウム光触媒(Co-ZrO2)を調製した。この触媒を用いて光反応系を検討したところ、CO2から主生成物としてメタン(CH4)、副生物としてC2H6、C3H8が生成されることを見出した。さらに、COを出発原料としたところC2H4とC3H6を主生成物として得ることができた。光照射のみにより、CO2からCH4、C2H6、C3H8の燃料を得られるばかりでなく、COはCO2から容易に生成できることから、カーボンニュートラルサイクルにおいて付加価値の高いエチレン、プロピレンを最終産物として生成できるようになる可能性がある。また、この反応系においてはH2と同様にH2Oも還元剤として働き、炭化水素の水素源となることを明らかにした。これらの触媒技術によって、高価な水素添加なしの人工光合成により、コスト面でも寄与できることが期待される。

Data

  • Co-ZrO2触媒は硝酸コバルトとジルコニアを液相還元法で反応させ、空気中で酸化後に真空中で脱気し水素ガスを加えて823K、または973Kで加熱還元することで作成した。
  • Co-ZrO2-823RおよびCo-ZrO2-973Rを用いた光触媒試験において、13CO(2.3kPa)H2(2.3kPa)からは13C2H4 が主生成物として生成され、逐次的に13 C3H6も生成した(A,B)。-973R触媒を用いた時の13C2H4 生成速度は5.2 ± 0.5 μmol/h/g catであった(B)。
  • Co-ZrO2-823Rを用いた13CO2 (2.3 kPa), D2O (2.2kPa), H2 (21.7 kPa)存在下での光触媒試験の結果、生成されたメタン種(CH4、CH3D、CH2D2、CHD3)に含まれるD原子の割合が9.2mol%であった。反応物(D2O, H2)中のD原子の割合と等しいことからD2O もH2と同様に13CO2 の還元剤として働くことが示唆された(C)。

Expectations

化学・触媒関連企業様と、光燃料化触媒の開発と生産体制の構築を目的として、共同研究を希望します。また、エンジニアリング企業様との共同研究を通して、本触媒を組み込んだ反応装置の開発を進めたいと考えております。パートナー企業様の希望に合わせた反応生成物のカスタマイズも検討可能です。

Patents

特願2020‐172619、特願2023-009696

Researchers

泉 康雄先生 (千葉大学 大学院理学研究院)

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