太陽光を利用して大気や排気ガス中の二酸化炭素からメタンやエチレンを生成する
Advantages
- 比較的安価な触媒材料を用いている
- UV-可視光照射のみで反応が進み、加熱等のエネルギーは不要である
- メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレンなどの炭化水素を選択的に合成する反応条件も検討中
Background and Technology
化石燃料の燃焼などで生成した CO2 を、太陽光などの光エネルギーを用いて燃料に戻すこと(CO2光燃料化)ができればカーボンニュートラルサイクルが実現できる。CO2 は安定な分子であり、分解して燃料となる炭化水素に構築し直すことは容易ではない。 また、持続可能性の観点からは、余分なエネルギーを要することなくCO2の光燃料化反応を進められる、比較的安価な素材を選ぶことが重要である。
発明者らは銀ナノ粒子と酸化ジルコニウムから成る光触媒によってCO2 を一酸化炭素(CO)まで還元できるという知見(https://doi.org/10.1021/jacs.8b13894)を基に、金属ニッケルと酸化ジルコニウムから成る光触媒によって、CO2 をメタン(CH4)へ還元する反応(図A)が進むことを明らかにした。
①CO2が酸化ジルコニウム表面でHCO3として吸着する
②酸化ジルコニウムと紫外線の作用でHCO3が還元されてCOが生じる
③水素と CO がニッケルの表面で熱により反応し、CH4が発生する (https://doi.org/10.1002/anie.202016346)
さらに、より付加価値の高いC2化合物の生成を目指すため、典型的なメタン化触媒で用いられるコバルトを含むように、コバルト粒子を担持した酸化ジルコニウム光触媒を作成した。この触媒を用いて光反応系を検討したところ、エチレン(C2H4)プロピレン(C3H6)を主生成物とする反応試験系を見出すことに成功した(図B)。現在、生成物の選択的合成法や触媒の製造コスト、取扱いやすさの向上を目指して触媒や反応系の最適化を進めている。
Data
- ニッケル-酸化ジルコニウム触媒:13CO2 (2.3 kPa)とH2 (21.7 kPa)を(A) UV/可視光下で反応させたとき、または(B) 暗下→UV/可視光下(24時間経過以降)、393Kで反応させたときのメタン(12CH4と13CH4)生成量の推移。(C)と(D)は 13CO2(2.3 kPa)、H2O (2.3 kPa)、およびH2 (21.7 kPa)を(A)と(B)の同様の条件で反応させたときの推移。触媒量は0.020 g、UV/可視光強度は186 mW/cm2であった。
- コバルト-酸化ジルコニウム触媒:反応機構を明らかにし、コバルトの還元状態が重要であることを示した。エチレンの産生が向上するような反応ガスの濃度など反応条件を最適化している。
Expectations
化学・触媒関連企業様と、光燃料化触媒の開発と生産体制の構築を目的として、共同研究を希望します。また、エンジニアリング企業様との共同研究を通して、本触媒を組み込んだCO2反応装置の開発を進めたいと考えております。パートナー企業様の希望に合わせた反応生成物のカスタマイズも検討可能です。
Patents
特願2020‐172619、特願2023-009696
Researchers
泉 康雄先生 (千葉大学 大学院理学研究院)
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