短い発現抑制配列をCreの上流に配置することで大腸菌におけるベクターの自発的な組換えを阻止し
CreとLoxPが併存したコンディショナル発現ベクターを得ることができる
Advantages
- Cre-LoxP配列の受精卵への導入が一度で完了することで交配にかかる時間コストを削減
- 大腸菌体内で発現させたくない遺伝子配列をコードするベクターにも適用可能
Background and Technology
Cre-LoxPマウスは、Creマウスと特定配列をLoxP配列で挟んだベクターを導入したFloxマウスを交配させて作製する。例えば2色の蛍光たんぱく質(GFP, mCherry)による組織特異的なレポーターマウスを作製する場合には、①組織特異的プロモーターに連結したCre配列②ユビキタスプロモーターに連結したFlox化GFP③mCherryを連結させたベクタープラスミドを導入すれば、理論的には交配の過程を経ることなく組織特異的にmCherryを発現するレポーターマウスを得ることができる。
発明者らはこの理論に従って、CreとFloxを含有しているプラスミドを大腸菌で作製しようと試みたところ、LoxP配列で挟まれた遺伝子の特定配列が消失することが判明した。これは宿主の違う組織特異的プロモーターであっても大腸菌内でCreが発現しLoxP配列を介した自発的な組換えが生じていることが示唆された(右図)。
そこで発明者らは、大腸菌内でのプロモーター発現を抑制する20塩基程度の配列を同定し、Cre上流の組織特異的プロモーターに連結させたところ、自発的な組換えを抑制し充分量のプラスミドベクターを得ることに成功した(上図)。得られたプラスミドを導入したF0世代のマウスおよびイモリにおいて、Cre-LoxPシステムが働き組織特異的な蛍光たんぱく質の発現を確認した。
同定した配列は大腸菌内でのプロモーターを抑制する配列であり、Cre-LoxPの共存ベクターだけでなく、菌体に悪影響を与えるリスクのあるタンパク質をコードするベクターの構築にも有用である。
Data
網膜色素上皮細胞特異的にmCherryを発現させるCre-LoxPコンストラクトを導入したイモリ(A)および骨格筋細胞特異的mCherryを発現させるCre-LoxPコンストラクトを導入したマウス(B)におけるGFPおよびmCherry発現
Expectations
本発明のライセンスを受けて遺伝子改変動物の開発に利用いただける企業を求めています。MTAで評価するためのベクターの提供(有償)も可能です
Patent
特許出願中
Researchers
千葉 親文 教授(筑波大学・生命環境系)
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