低濃度フィブリンで作製する3次元細胞シート

2025/03/19 12:37 - By Tech Manage

薬剤の含有も可能な、多層・大面積の細胞シートを簡便に製造可能

Advantages

  • 大面積(大きさや形状は自由に調製可能)で、3次元的な細胞シートを作製可能。
  • 細胞シートに薬剤を含有させることが可能。
  • 誰でも簡便に作製可能で、比較的短時間に低コストで作製できる。
  • ラットの心筋梗塞モデルで実証済み。

Background and Technology

再生医療において、失われた臓器機能を補うために、3次元的な細胞シートを構築して移植する治療法が注目されている。しかし、従来の細胞シート技術では高価な装置や長時間の処理が必要とされてきた。また、細胞シートの基材として、生体接着剤として機能するフィブリンゲルが有用とされっているが、フィブリン濃度が低いと成形が難しく、濃度が高いと細胞にダメージを与えやすいなど濃度調整や操作の複雑さが問題となっていた。
そこで、本研究者は細胞にダメージを与えないフィブリン濃度を保持しながら、簡便で低コストなフィブリン細胞シートの製造方法を開発した。具体的なプロセスは以下の通り。

1.ゼラチンハイドロゲル基材上に細胞または薬剤を含むフィブリノゲン溶液を滴下。

2.トロンビンを添加し、フィブリン化反応を開始。

3.ポリプロピレンシートなどの支持膜を密着させ、均一なフィブリンゲル層を形成。

4.ゼラチンハイドロゲル基材を溶かしてフィブリン細胞シートを回収。

この手法により、低濃度フィブリンでも細胞が生存可能な環境を維持し、フィブリンシートの均一性と取り扱いの容易さを実現した。そのため、3次元細胞シートに積層する際も簡便で短時間に構築することができる。フィブリン細胞シートの大きさや形状は自由に調製することができ、5✕5(cm)のシートまで作製済みである。本技術を用いて、心臓や臓器・皮膚等の修復・再生、移植後の機能改善や血管新生促進に貢献することができる。

Data

  • üラットの心筋梗塞モデルに、心筋梗塞を起こさせてから2週間後、iPSから誘導した心筋細胞を含んだフィブリン細胞シート(ECT)を心筋の傍梗塞部位の表面に貼付して移植した。移植後1週間おきに4週目まで心機能(収縮能、収縮期末期径、拡張期末期径)の評価をエコー検査で行ったところ、フィブリンシートを移植したラットでは移植後4週間の間に心機能の有意な改善が認められた。またラミニンを含ませたフィブリン細胞シート(L-ECT)はさらに治療効果が高まった。

Expectations

大阪大学では、本技術にご興味のある以下のような企業様とのコラボレーションを希望します。

  • 細胞シートを開発されている企業:本技術の導入による細胞シート・フィブリンシート製品の開発、細胞治療のプラットフォーム技術としての開発。
  • 細胞医薬を開発している企業様:貴社の細胞医薬のフィブリン細胞シートへの搭載

Publications

Samura, T., et al., J Am Heart Assoc. 2020;9:e015841.
DOI: 10.1161/JAHA.119.015841

Patents

WO2021/065395

Researchers

佐村 高明 先生 (大阪大学)


Please click here to see English summary.

以下のフォームからお問い合わせください

Tech Manage