ヒトiPS細胞から誘導した絨毛-クリプト構造を有する、高品質な細胞医療用の腸管オルガノイドを腸内に直接投与することにより
腸管組織再生を促すメカニズム
Advantages
- 腸管オルガノイドを腸内に直接投与することにより腸管組織再生を促すメカニズム
- 腸管オルガノイドは生着せず脱離・排出されるため未分化iPS細胞腫瘍化リスクが低い
Background and Technology
腸管オルガノイドは、腸疾患や薬物動態の研究のための重要なツールであり、ヒトiPS細胞由来腸管オルガノイドは再生医療・細胞医療への展開が期待されている。
一方で、既存のiPS細胞からの分化誘導法では腸管オルガノイドの特徴である絨毛-クリプト構造が反映できない。また、マトリゲル包埋による培養では大量作製が難しく、治療用に使うには課題があった。
発明者らは、分化誘導時の培養条件を工夫することで、マトリゲル等の生物材料を使用せずにヒトiPS細胞から生体腸管構造に近い絨毛-クリプト構造を有する腸管オルガノイドを大量に作製する方法を開発した。
また、低分子化合物の添加によって、腸管幹細胞、パネート細胞や杯細胞など各種の腸管細胞のマーカーの発現がヒトの腸組織と近い腸管オルガノイドの誘導に成功した。
さらにDSS腸炎モデルマウスにおいてヒトiPS細胞由来の腸管オルガノイドをマウスの腸内に直接投与したところ、治療効果が認められた。投与した腸管オルガノイドの腸管への生着は確認されず、脱離・排出されたと思われることから、腸管オルガノイドは腸管の組織再生を促す効果(trophic効果)があったと考えられる。iPS細胞治療の新しい治療コンセプトとなることが期待される。
Data
- 1週間のDSS飲水投与で腸炎を誘発したマウスに対して、9日目と12日目にiPS細胞由来腸管オルガノイド細胞懸濁液を肛門から注入したところ体重回復、腸管組織のムコ多糖産生の亢進が認められた
- 腸管オルガノイドを注入したDSS腸炎モデルマウスでの直腸組織でのタイトジャンクション形成と、細胞増殖マーカーの発現が確認された
- オルガノイドの生着は認められなかった
Expectations
本技術を元に腸疾患に対する細胞医療を共同で開発していただける細胞医薬の開発企業を求めています。
Patents
Patent No. PCT/JP2018/017572
Researchers
松永 民秀 教授(名古屋市立大学 薬学研究科)
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