歯肉線維芽細胞を細胞源とするiPS細胞の効率的な製造方法

2025/10/16 14:32 - By Tech Manage

歯肉の線維芽細胞は、従来の細胞源における採取可能な細胞量やiPS細胞へのリプログラミング効率の低さなどの問題点を解決することが期待される細胞源である

Advantages

  • 細胞の採取が比較的容易で、患者負担も少ない
  • 皮膚線維芽細胞よりも7倍高いiPS細胞の樹立効率
  • 歯肉線維芽細胞は増殖能力が高く、培養が容易
  • c-MYCを除く3遺伝子(OCT3/4、 SOX2、 KLF4)の導入により腫瘍形成・遺伝子変異リスクの低い高品質なiPS細胞を樹立可能

Current Stage & Data

  • 同じ継代数の尾尖線維芽細胞(TTF)、下顎歯肉線維芽細胞(mGF)および口蓋歯肉線維芽細胞(pGF)を用いてリプログラミング効率を比較したところ、GFは7倍以上高い効率を示した。特にpGFsは、10継代(P10)にわたって高いリプログラミング効率を維持した(右図)。
  • 研究者らのグループでは、歯肉線維芽細胞を用いたiPS細胞由来歯原性上皮系細胞を応用した歯胚再生にも取り組んでいる。



Partnering Model

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Background and Technology

患者由来のiPS細胞から分化させた病態モデル細胞は治療薬候補化合物のスクリーニングや薬剤感受性の評価としての応用が進んでいる。一方で、従来のiPS細胞作製に用いられてきた皮膚線維芽細胞や血液細胞は、採取に外科的な侵襲を伴い、患者への身体的・精神的負担が大きかったり、樹立効率が低かったりするという問題があった。本研究者らは、iPS細胞の細胞資源として、歯科治療の過程で切除されて廃棄されていた口腔粘膜の歯肉に着目した。歯肉の線維芽細胞は、高い増殖能力を持つだけでなく、口腔粘膜の創傷治癒を早めるなど、他の線維芽細胞とは異なる性質がある。研究を進めた結果、歯肉を用いると、容易に質の高いiPS細胞が樹立可能であることを見出だした。また、歯肉の線維芽細胞は、iPS細胞を増殖させるためのフィーダー細胞としても適していることを明らかにしている。

Patents

特許5514215号、US8748179B

Publication

Researchers

江草 宏 教授 (東北大学 大学院歯学研究科) 


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