E6タンパク質のアミノ酸変異をマーカーとした新しいHPVのリスク分類方法
Advantages
- 従来の分類方法では正しく分類できなかったHPVのリスク分類が可能となり、高精度。
- 手術等の治療方針や子宮頸がん前段階の経過観察期間を最適化し、患者負担や医療コスト低減に繋がることが期待される。
Background and Technology
ヒトパピローマウィルス(HPV)の感染は子宮頸がんを誘発することが知られており、最近では中咽頭がんの原因とも言われている。HPVには200種類を超える遺伝子型があり、疫学的研究に基づき、過去にがんで発見された型は高リスク型、がんで発見されていない型は低リスク型として分類されているが、30種類以上が未分類となっている。HPV検査は、子宮頸がん検診として最近国内での利用が進んでいるが、現在の商業的な検査はHPVの持つL1遺伝子の塩基配列に基づくリスク分類を行っている。しかし,疫学的リスク分類と一部一致しないことが問題として考えられていた。また、L1はキャプシドを構成するタンパク質であり、表面のタンパク質ががん化に直接関与する可能性は低いと考えられる。
今回、研究者らは予測性の良いバイオマーカーを見出すために、HPVの塩基・アミノ酸配列に着目して研究を重ねられた。その結果、HPVのもつE6タンパク質に含まれる4つのアミノ酸の配列と変異を調べることで、疫学的に分類されたリスクとも一致する新しい分類方法を開発した。E6タンパク質はがん細胞の生存と増殖を支えているタンパク質であり、がん化と強く関連することが知られている。
子宮頸部異形成は、子宮頸がんの前段階であり、その病変の程度によって軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)の3種類がある。その主たる原因は、ハイリスク型HPVの感染であるが、CIN1やCIN2の場合は自然治癒することもあるため、直ちに治療するのではなく経過観察となることが多い。本発明の方法により、HPVの正確なリスク分類が可能となれば、CIN1、CIN2の経過観察時の有効な情報として利用することが期待される。加えて、未分類のHPVを正しく評価することにも有効な手法として期待される。
Data
- 本発明者らは、HPVのE6遺伝子がコードするアミノ酸配列において、コンセンサス配列34、40、102、120番目に対応するアミノ酸がそれぞれフェニルアラニン、アルギニンまたはリジン、チロシンまたはロイシン、ロイシンであるHPVをハイリスク型、それ以外のアミノ酸の組み合わせを有するHPVをローリスク型としてHPVを分類した結果、Munozら(2003)による疫学的リスク分類と一致することを確認した。
- L1遺伝子の配列による分類と臨床学的な分類によるリスクが異なっていたHPV70、HPV73をE6タンパク質上の4アミノ酸による分類を行ったところ、疫学的なリスク分類と一致することを確認した。
- 頸部ぬぐい液検体(n=325)を対象に本発明の方法でリスク分類を行ったところ、臨床転帰(回復、非回復)と相関することを確認した。
Expectations
- 本発明は長崎大学・産婦人科 三浦清徳先生との共同研究です。
- 本発明を活用した診断技術の製品開発にご興味のある診断薬関連企業を探しています。まずは技術の詳細説明とディスカッションから始めさせていただければ幸いです。
Publications
Niiya et al., Journal of Medical Virology. 2023 Aug;95(8): e29049. doi: 10.1002/jmv.29049.
Patents
特許出願済(未公開)
Researchers
吉浦 孝一郎教授 (長崎大学 医歯薬学総合研究科 人類遺伝学研究分野)
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