卵巣癌組織が放出する細胞外小胞(EV)に内包されるRNA修飾をマーカーとしたプラチナ製剤抵抗性の検査方法
Advantages
- 生検等により患者から切除された組織由来EVに内包されるマーカーであり、信頼性の高い検査方法に繋がることが期待される。
- EVに内包されるRNA修飾をマーカーとして用いる新たな診断法
- 今回見出したRNA修飾に対する抗体も取得可能と期待でき、簡易なキット化を視野に入れた開発も期待できる。
Background and Technology
卵巣癌の治療において、手術により癌を取り除いた後、多くの場合は薬物療法の初回治療として、カルボプラチン(プラチナ製剤)とパクリタキセルの併用が用いられる。このプラチナ製剤を用いた治療は奏功率が高いものの、半数以上の症例が抵抗性で再発し、また激しい副作用のため、患者の身体的負担が非常に高い。そのため、初回治療前にプラチナ製剤に対する感受性が判断出来れば、患者の身体的負担の軽減および医療費の大幅な削減にも寄与できると期待される。しかしながら、これまでいくつかの薬剤感受性診断マーカー候補分子が報告されているものの、感度・特異度が十分ではなく、臨床の現場で使用されているものは存在しない。
本発明者のグループは、患者から切除された癌組織より組織特異的なEVを回収する方法を開発している。癌組織由来のEVは生体内環境を直接反映しており、さらに正常部位との比較も可能であることから信頼性の高いマーカー候補が取得できることが期待されている。
今回、卵巣がんに着目し、癌組織由来EVに内包されるRNA修飾を探索したところ、卵巣癌特徴的であり、プラチナ製剤の抵抗性を予測するマーカー候補をいくつか同定することに成功した。解析した卵巣癌組織由来なお、これらのマーカー候補は、将来的には抗体での検出も期待される。
Data
- 正常卵巣組織由来EVと卵巣癌組織由来EVのRNA修飾の内包量を調べたところ、今回見出したマーカー候補が癌組織で特徴的に内包されていることを確認した。
- プラチナ製剤抵抗性の卵巣癌患者組織由来EVとプラチナ製剤感受性の卵巣癌患者組織由来EVを調べたところ、今回見出したマーカー候補がプラチナ製剤抵抗性の癌組織で特徴的に内包されていることを確認した。
- 今回見出したマーカー候補の内、最も性能が高いもののAUCは0.79であった。なお、マーカーの測定は質量分析装置により行われた。
Expectations
- 臨床サンプルを使用し、プラチナ製剤抵抗性卵巣癌のマーカー候補となるEV内包のRNA修飾を同定済み。
- 臨床サンプルは共同研究施設より入手。
- マーカーの組み合わせにより、さらなる診断性能の向上も期待できる。
- 本発明を活用したプラチナ製剤抵抗性の診断技術の製品開発にご興味のある診断薬関連企業、製薬企業等を募集しております。
- また、本研究者らは、今回見出したRNA修飾の抗体取得に関して、企業との協業を希望しております。
Patents
特許出願済み
Researchers
神宮司 健太郎先生 (大阪大学 薬学研究科 特任講師)
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