150度前後の未利用熱を利用する潜熱蓄熱材

2023/07/25 20:16 - By Tech Manage

糖アルコール化合物と添加剤の組み合わせにより、過冷却を緩和した潜熱蓄熱材

Advantages

  • 少量で安価な添加剤により、過冷却を緩和することで、熱利用効率(発熱エネルギー/吸熱エネルギー)を飛躍的に高める。
  • 単位質量あたりの蓄熱量が高く、域内熱供給のための蓄熱材運搬コストの低減に繋がる。

Background and Technology

近年、二酸化炭素排出規制によって化石燃料の使用削減が求められており、各プロセスの省エネルギー化に加え、様々な産業プロセスから発生する産業排熱等の未利用熱エネルギーを有効利用する必要があり、より効率の高い蓄熱技術を開発する必要がある。
国内の産業排熱の大部分は、200℃以下の低温排熱であり、有効利用が期待されている。化学物質の相転移における発熱/吸熱現象を用いた潜熱蓄熱は、装置構成がシンプルな蓄熱技術であり、顕熱蓄熱技術とくらべて蓄熱密度が大きいという利点がある。マンニトールやエリスリトール等の糖アルコール化合物は、この温度域で蓄熱操作が可能な潜熱蓄熱材であり、単位質量あたりの蓄熱量が高く、安全性も高いことから注目されている。一方で、マンニトールやエリスリトール等の糖アルコール化合物は、融解温度と凝固温度のギャップ(過冷却)が大きいことが知られている。そのため、目的温度における迅速な熱出力操作が困難であり、蓄熱操作時(潜熱蓄熱材組成物の融解時)に吸収される熱量に対する放熱操作時(凝固時)に放出される熱量の割合(熱利用効率)が低いといった問題があった。熱利用効率を向上させるには、過冷却を緩和させる必要があるが、そのためには、大量の過冷却防止剤を添加しなければならず、単位質量当たりの蓄熱量が小さくなってしまった。
今回、糖アルコール化合物に対してゼオライトや糖アルコール類縁体を少量混合することによって、糖アルコール化合物の凝固温度が高温側にシフトし(過冷却が緩和)、糖アルコール化合物単体よりも熱利用効率が向上することを確認した。

Data

Expectations

  • 5 wt%のゼオライト添加によりエリスリトールの熱利用効率が44.3%から69.7%に向上することをラボスケールの試験にて確認した。
  • 添加剤の改良によりさらなる性能向上が期待される。
  • 本潜熱蓄熱材料を利用した熱交換システムの装置化、実証試験が必要。

本潜熱蓄熱材料の開発・製造販売にご興味のある企業、本蓄熱材料を利用した熱交換システムの開発・製造販売・利用にご興味のある企業を探索しております。ご興味がございましたら、先ずは、劉先生との面談をご提案いたしますので、技術の詳細説明とディスカッションから、スタートさせていただければ幸いです。

Patents

Researcher

劉 醇一 准教授 (千葉大学 工学研究科) 

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