Advantages
- 新規な単結晶材料ペロブスカイト酸化物・BNMN (Bi1/2Na1/2) (Mg1/3Nb2/3)O3
- 誘電率は、キュリーワイス則に従わず、温度(室温~700K)に対し線形特性
- 温度センサーとして現存最高水準の精度(白金温度計同等レベル)
Background and Technology
高誘電率材料として、積層セラミックコンデンサー(以下、MLCC)に使用されるチタン酸バリウム(BaTiO3:以下、BT)が広く知られているが、BTは温度によって室温付近における相転移で誘電特性が大きく変わり、室温付近での使用が難しいという課題がある。また、代表的な強誘電体であるPbTiO3は、単純なペロブスカイト構造をもち、誘電率は非常に高いが、周波数と温度によって特性は大きく変化し、高温環境下、広い周波数範囲で使用可能な、高誘電率材料は存在しなかった。
本研究ではこれらの課題を解決する方法として、PbTiO3のAサイトのPbを(Bi1/2Na1/2)で置き換える、Aサイト複合ペロブスカイト酸化物(Bi1/2Na1/2)TiO3となり、BサイトのTi を(Mg1/3Nb2/3)に置き換えると、B サイト複合ペロブスカイト酸化物 Pb(Mg1/3Nb2/3)O3となり、ブロードな誘電率ピークを持つリラクサーの特性を表すことから、これらを併せ持つ新規なA/B複合ペロブスカイト酸化物 BNMNを開発した。
作製法は、自己フラックス法によりBi2O3、Na2CO3、MgO、Nb2O5 を混合し900℃/4hの仮焼でBNMN粉末を得て、その後、BNMN粉末とフラックス Bi2O3, Na2CO3 (質量比 BNMN : Bi2O3:Na2CO3=1:0.2:0.2)を混合し、1250℃からの徐冷によってBNMN単結晶を得た。X 線の測定結果からBNMN結晶は立方晶ペロブスカイト構造を持つことが明らかとなった。また下記Dataに示される特徴的な特性から、BNMNは常誘導体であるにも関わらず室温で高い誘電率を有し、且つ、線形の温度特性を持つことから、温度センサーや温度・周波数変化に対応可能な高誘電材料としての利用が期待できることが示された。
Data
BNMN単結晶の誘電率および損失の温度依存性
BNMN の1kHz~100kHz における誘電率の温度変化。BNMN は常誘電体であるにもかかわらず、室温において920という高い誘電率を有する(この値は MLCC に利用されるBaTiO3 単結晶のc軸の誘電率109 をはるかに超え、a軸の誘電率1970の約半分を表す)。更に、誘電率はキュリーワイス則に従わず線形の温度特性を示し、ε=1163-0.829*T の線形特性を示した。
Expectations
現段階:BMNM単結晶製造、構造解析・特性評価完了段階
次段階:1.本材料による用途別温度センサー性能評価
2.本材料によるコンデンサの開発・製造
3.高純度BNMN多結晶材料製造プロセスの確立
本誘電材料を使用されたいニーズをお持ちの企業様、次段階1.2.の開発、性能評価、製品化に向けたコラボレーションや共同研究に関心をお持ちの企業様がおられましたら、先ずはお気軽に面談ディスカッションからお願い致します。
Publications
Publications
日本セラミックス協会第37回秋季シンポジウム
『高誘電率を持つ新規誘電材料(Bi1/2Na1/2)(Mg1/3Nb2/3)O3 単結晶の開発』
Researchers
国立大学法人静岡大学 工学部 電子物質科学科 教授 符 徳勝
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